2012年09月17日

The Big 3 (90年代UKポップ特集その3)

"聴いた瞬間、ジャムっぽいと解るネオ・ネオ・モッズのド真ん中"

『The Big 3』('96) 60ft Dolls(60ft・ドールズ)



さて、せっかくUKポップ特集として続けているのだから、心に残っているバンドをと
思って色々聴き返したり、自分の10代後半から20代前半の思い出を辿ってるのだけど
ブラー、オーシャン・カラー・シーン、ドッジー、ティーンエイジ・ファンクラブ
辺りまではやっぱり鮮烈な記憶で、ある意味アンチだったけどオアシスだって
随分良い曲を残してくれたと思う。

僕は典型的モッズなんでブラー、オーシャン、ドッジー、ウェラーは忘れることは無いけど。

他にはブー・ラドリーズとか前回取り上げたキャスト、そして愛らしいキャラで
人気が高かったスーパーグラス辺りも思い出す。あ、アッシュとかも日本では
人気高かったな。パルプもいたね。苦手だったけど。

後はハイプの匂いもプンプンしたけど、それがある意味象徴的だったメンズウェアや
ブルー・トーンズ(オアシスに代わって全英1位まで取ったけど)、ブームの後半に
大ヒットしたクーラ・シェイカー辺りまでは印象に残ってるかな。

後はブリット・ポップそのものとは言えないけど、そのブームに巻き込まれるように
もしくは乗じてヒットしたり、横風を受けた作品を発表したミュージシャンも
多かったと記憶している。

その最たる物がモッドファーザーと崇められたポール・ウェラーだったり
その時期に久々アトラクションズを再始動させ、ビートルズのアルバムで有名な
ジェフ・エマリックをプロデューサーに立てて『オール・ディス・ユースレス・ビューティー』
という珠玉のメロディを紡いでくれたエルヴィス・コステロとか忘れちゃいけない
元祖ブリット・ポップ、スティーヴン・ダフィもこの頃にはかなりカラフルな
ポップ作品をリリースしてる。元祖ブリット・ポップならライトニング・シーズこそ
そうだよね。フットボールの応援歌「スリー・ライオンズ」は過去にここで取り上げてる。

更に言うならブリット・ポップと言うよりはUK版ヴィジュアル系(ネオ・グラム・ロックかな)
とも言えるスウェードがブームの最中に発表した『カミング・アップ』は耽美的な中にも
かなり明朗でキャッチーなポップが炸裂する異色の名作だったりもした。
スウェードはそんなに好きじゃないって人でもここからのシングル「トラッシュ」は
悪くないねって人、居るんじゃないかな。僕は間違いなくそういうタイプ。

そんな風にブリット・ポップ・ブームとは単にド真ん中のミュージシャンだけが
活躍したわけではなく、むしろ脇を固めたベテランや既にメジャーだった他の
ミュージシャンにも少なからず影響を与え、彼らも良い仕事をしていたりするのである。

いや、むしろ彼らの作品の方が良いくらいかもしれないし
そちらのほうが印象に残っていたりするのである。

でも、いきなりそれを取り上げてしまっては元も子もないし
少し15年前の自分を引っ張りだして、何聴いてる?って
何度も問い質してみれば、忘れかけていても思い出せるものが有るかも知れないから。

という訳で相変わらず前置きが長いが今回は60ftドールズである。

名前からして少し狙い過ぎな感も有る彼らだが、サウンドもそのままである。
説明するよりもこの音源を聴いてもらったほうが早いだろう。


「Stay」('96)

どうだろう、ルックスやサウンド、そしてヴォーカルまでジャムを想像せずには
居られない雰囲気満載である。ちょっとラトルズ並にジャムっぽい。

最初に「僕はモッズに絆されたクチなので、そういうバンドが思い出深い」と書いたが
その割に60ftドールズ、ちょっと思い出すのに時間がかかった。

でも良く良く思い出してみると、確か渋谷の東急プラザのCD屋に置いてあって
そんな所では普段余りCDは買わなかったけど、少し気になって悩んだ挙句購入した
事まで思い出した。覚えているものだね、そういう事って。

ある意味ダイレクトなバンドなのだから、当時からもっと気に入っても
おかしくないような気がするが、当時の自分はモッズにははまり込みつつも
実はジャムが余り好きじゃなかった。ジャムだけでなく70年代のネオ・モッズは
好きじゃなかった。実は今でも余り好きじゃない。

確かにジャムのファッションは大いに参考にしたし、ポール・ウェラーなんだから
嫌いってのはおかしな話だけど、スモール・フェイセズでモッズを知った自分には
パンクの影響も強いネオ・モッズは少し青過ぎて、ちょっと苦手だった。

スモール・フェイセズから70年代のフェイセズやハンブル・パイ、もしくはスリム・チャンス
のように彼らはルーツを匂わす路線に進むわけで、そういう意味では直接当時から
モッズとは異なるフリーなんかもそういう路線だった。

僕にとってモッズというのはそういうサウンドを咀嚼してもモダンで有るという世代で
それを一番体現していたのは誰あろう90年代のポール・ウェラーであり、その舎弟に
あたるオーシャン・カラー・シーンもそうだった。彼らはファッション的にはモッズでも
その実はより70年代のルーツ・ロックに傾倒したようなサウンドだったので、僕は
そういう物にモッズを感じ取っていた。ザ・バンドだってクールでモダンだという感じ。

上記に当てはめれば、ジャムよりスタカンのほうがむしろモッズであると思える。

そんな世代なので、僕にとってネオ・モッズは青くてパンクでしんどいものだった。
さすがにジャムは楽曲の格が違うので、今では普通に好きだけど、もうネオ・モッズの
B級バンドは聴かないし、聴きたいとも思わない。

だから僕は2トーンにも思い入れが無い。スカが苦手なのである。
スカやロックステディが苦手なモッズはモッズじゃないと言うなら僕はモッズじゃないだろうし
そう言われても全然構わない。要は自分がどう思うか、それをどう具現するかが問題なわけで。
まぁ具現も何ももうフレッドペリー以外のポロシャツを買わなくなってから20年以上
経ってしまったし、厳密にはモッズは若者の物だと思うので、
モッズとは何ぞやを論じる世代でも無いし、その気も無いのだけど。
ただの被れな中年で結構。

でも僕は未だドクター・マーチンの10ホールとMINIに憧れているけどね笑。

さておき、上記の理由できっと60ftドールズは逆に少し忘れかけていたのだろう。
オーシャンみたいに骨太路線か、ブラーみたいにキンクスがベースの振りして
ポップの玉手箱みたいな感じが、当時の好みだったんだろうな。

で、今改めて聴いてみると、期待してた以上に良いな、と(笑)。
もうブリット・ポップと言うよりはジャムへのストレートな愛情を示した
ネオ・ネオ・モッズという狭いくくりなんだろうけど、90年代らしく意外に
メロディが練られてるんだよな。

このサウンド、ちょうど10年後くらいに"ネオ・ブリット・ポップ"として流行った
オーディナリー・ボーイズに似てるような気がする。
彼らの方がXTCとかも聴こえるのでもう少し幅はあるけど。

どれもネオ・モッズ(ジャム)へのオマージュとして捉えれば中々良い出来栄え。
少しジャムよりメランコリックなのが特徴かな。アレンジはシンプルに行くしか無い
バンド構成な分、楽曲自体は意外と展開が考えられていたりとか。

それは楽器のチョイスにも現れていて、普通こういうバンドならリッケンだろうという
ギターやベースが普通にギブソンES-335とフェンダーのプレシジョンベースだったりする。
こういう所、90年代のモッズって現実的なチョイスするんだよな。良い楽器がそこそこの
値段で世間に流通した時代だから、無理やり無茶なチョイスしないというか。

実際演奏も結構良くて、3ピースとネオ・モッズ的世界観を荒々しくもパワフルに
表現してたんだけど、実際はもっと上手いけど敢えてラフに的な計算も感じる。


「Pig Valentine」Live at Club Quattro Shibuya 96/9/11

何と、彼らの日本公演映像が残っていた。上げてくれた主に感謝である。
96年のクラブ・クアトロのライブ。この頃は毎月のようにUKのポップ・バンドが
ここでライブをしていた。僕にとっては青春の場所のように感じる。


比較的コンセプトもサウンドもしっかりしてるので、ブームの最中ということも
有ったのでもっと売れても良かったような気がするのだが、3枚目のシングル
「トーク・トゥ・ミー」がベスト30に滑りこんでスマッシュ・ヒットになったまでは
良かったけど(僕もこの曲で彼らを知った)、それが彼らの最高位で、続くアルバム
『ザ・ビッグ3』も36位止まりだった。何かモッズのくせにこのアルバムタイトルは
無いなと思うので、こういう最後の詰めの甘さがコアなファンも増やさなかったのかも。


「Talk To Me」('96)

これも久々、本当10何年ぶりに聴いたけど、結構青春マイナー系モッド・ロックって感じで
良いなぁ。このバンドよりくだらないバンドは一杯居たのでもっと成功しても良かったと思う。


98年の『Joya Magica』ではこの手のバンドらしく順当にサウンドの幅を広げ、全米ツアーの
オファーも受けて、メジャーでなくとももう少し幅広く活動していくのかと思ったのだが
ツアーをキャンセルして、そのまま分解状態。解散したのかも良くわからない。




「Back To The Summer」('98)

2ndアルバムから。
シャッフルとホーン、ちょっとカラフルさも身に着けて、UKポップとしては
順当な成長を遂げているし、良い曲を書いていたと思う。


この頃になると、マネジメントで揉めていたのか、日本盤のリリースは先行と言われていたのに
中止になったり(結局後にリリース)、マネージャーが居なくなったとか、そういう面倒を
見てくれる人材にも恵まれていなかったかと思う。

スーパーグラスやアッシュと張り合えるくらいの能力やルックスは持っていたのに残念だ。
でも、僕も決して熱心なファンとは言えなかったスーパーグラスやアッシュと比べても
記憶から半ば消えていたので、やっぱり残れない何かが有ったのかな。

因みにジャム直系のネオ・モッズ・サウンドでは有るけど、彼らの出身は
ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキやスーパー・ファリー・アニマルズのような
ヘンテコポップバンドを生み出したウェールズ出身だった。

ちょっと玉石混交の洪水の中で、埋もれちゃったかな。
ジャム系のネオ・ネオ・モッズとしては今聴いても優秀なバンド。
好きな向きにはオススメ。
posted by cafebleu at 01:05| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 60FT Dolls | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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