2013年12月14日

On The Leyline

"デビュー作と『モーズリー・ショールズ』の間に有っても良さそうな作品"


『On The Leyline』('07) Ocean Colour Scene

ちょっとしたブリット・ポップ・リバイバルの最中にリリースされた前作
『ア・ハイパーアクティヴ・ワークアウト・フォー・フライング・スクワッド』
は彼らが『モーズリー・ショールズ』でUKのロックバンドとして主軸クラスに
返り咲いてから最も失敗したアルバムとなってしまった。

それはチャートアクション的にもそうだし、内容もこれまでの充実ぶりと比べると
やはり見劣りしてしまう結果となった。ファンとしては残念な部分も有ったけど
それもバンドが続いてるからこそ起こり得る事で次は彼ららしさを取り戻して
くれれば良いと、そんな風に思っていた。

しかし、それはコアなファンの想いであって、一般的なリスナーは失敗すれば
心離れて行ってしまうものである。そういう移ろいやすいものも含めてポップは
商業音楽として成り立ってるわけだから。

特に商業的失敗はバンドを窮地に立たせる時がある。ここまで『モーズリー・ショールズ』
前後の大ブレイク時代はともかくとして、それ以降も堅実なセールスを記録していた
彼らにとって、前作の失敗と、恐らく所属していたサンクチュアリ・レコードが
元々彼らの居たMCAの親会社、ユニバーサルに買収されたことも有って遂にレコード契約を
失ってしまう。

一時期はどうなってしまうのだろうと個人的には思っていたけど、そんな困難を乗り越えて
2007年にリリースされたアルバムが『オン・ザ・レイライン』という事になる。
レーベルの不遇は有ったものの、スパンとしては2年といつも通りくらいのペースである。

最初に言ってしまうと今作は個人的に最も印象の薄いアルバムである。
それは自分が音楽を熱心に聴いてる頃では無かったからも知れないけど
内容的な理由もあると思う。前作ほどの違和感とかも感じなかったのだけど
今作は今までの彼らの作品に比べると凄くシンプルというか、インスタントと言うか
体の良いデモのような作品に思え、いろいろな意味で心を揺さぶられるような感じがなく
あぁ、なるほど、ふむふむって感じでどうも心に残らないのである。

何もシンプルなことが悪いとは思わないし、時には贅肉を削ぎ落したような作品が
有っても良いと思う。だけどこの作品でオーシャン・カラー・シーンがやりたかった
世界って本当にこういう事なのかとか、実際メジャーなレコード会社との契約を
失って、こういう作品しかやりようが無いのが厳しい現実だったのではないかと想像
出来てしまうからである。正直96年に『モーズリー・ショールズ』で衝撃を受けてから
そういう感じのする作品を聴くことになってしまうとは、そんなに時間が経って
しまったのかと思った最初の作品でも有ったし、ちょっと悲しくも有った。
でも、そんな浮き沈みも含めて応援し続けるのがファンってものだと思うから。
(僕くらいオーシャン想いのファンも居るのだから日本にもう少し来て欲しいが)

さて、内容だが、まず最初にジャケットを見た時、それ程凝ったデザインでもないし
ただ本人たちが写ってるだけと言ってしまえばそれまでだが、ロゴや写真の雰囲気が
いつも通りに戻って少しホッとした記憶はある。逆に相違点としてはデーモン脱退後
から追加メンバーとして登場してきたギターのアンディ・ベネットとダン・シーリーが
初めてアルバム・ジャケットに登場している。

今作は最初に書いたようアレンジや装飾の殆ど無い、バンド全体で録音したような
シンプルな音作りと、『モーズリー・ショールズ』以降見られなくなっていた
デビュー当時のインディ・ポップ的世界観が久々に聴かれるという点で特徴的である。
なので最初に聴いた時、この作品はまるでデビュー当時の『ブルー・ディープ・オーシャン』
から『モーズリー・ショールズ』の間の4年ほどのブランクに出ていてもおかしくないような
作品のように聴こえたのである。

そう聴こえる一番の理由はやはりかなりシンプルなプロデュースなのではないかと思う。
今回のプロデューサーはジョン・リヴァースという人が担当しているのだが、この方
僕はあまり詳しくないのでDiscogsで調べてみたところ、1980年代から活動している
プロデューサー/サウンド・エンジニアなのである。

関わってる作品はパステルズやフェルトを始めとした80年代後半から90年代前半に
活躍したUKのインディ・ポップ、ネオアコやグラスゴー系譜のプロデュースを
中心に行ってる人のようである。

実はオーシャン・カラー・シーンとの関わりも浅くなく、『モーズリー・ショールズ』
前後のアルバムから漏れたシングルのB面曲、例えば「ロビン・フッド」や
「ハックルベリー・グローヴ」のようなアコースティックな楽曲を中心にプロデュースや
レコーディングを担当していたりする。

このジョン・リヴァースというプロデューサーが普段担当しているのはかなりインディ感の
強くてキラキラとしたようなギター・ポップ・サウンドを聴かせるミュージシャンが中心
なので、そんな雰囲気やアレンジは実際作品にも聴かれる要素になっている。

また、録音自体も12日間で行われたようで、そういった部分からもシンプルな作品という
裏付けが出来るのではないかと思う。逆を言えばそれだけ装飾や金をかけてない作品と
言うことも出来るのが今作で、ジョン・リヴァースというインディ畑の人選からも
やはりオーシャンはこれまでメジャーレーベルに居た時のようにお金や時間をかけれる
状態ではなかったのでは無いかと想像できる。

『オン・ザ・レイライン』はモーズリー・ショールズ・レコードという自分たちで設立した
インディ・レーベルからの作品になって居ることからも、この時期彼らが置かれた状況は
決して良いものではなかったのだと思う。そこで、比較的親交が有ってリーズナブルに
仕事をしてくれるのがジョン・リヴァースだったと、そう思って良いのではないかと思う。

そうなれば作品は必然的にシンプルになっていくものだ。そういう不遇が恐らく
バンドの更に原点に立ち返っていくような作品になったのではないだろうか。
『モーズリー・ショールズ』のような90年代らしい、ブレンダン・リンチらしい
ダブやアナログサウンドを効果的に配したようなサウンドになる前
『ブルー・ディープ・オーシャン』でデビューしたが、本来自分たちが目指したサウンド
とは異なる方に向かってしまった当時のサウンドの原点に帰ったような、そんな作品に思える。

そういう点で捉えれば今作は前作よりはオーシャンらしいし、楽曲もまとまっているし
全体的にロックに振りすぎてもいなければ、アコースティックでストイック過ぎることも
無く、全体的にバンドのサウンドで録音されている作品ということが出来る。

このレビューのために改めて聴いてみても、アルバム全体の雰囲気は悪くなく
シンプルでラフだけどオーシャン・カラー・シーンというバンドの良さは前作ほど
死んでいる感じはしない。

しかしながら、全体のバランスと引き換えに、個々の楽曲のクオリティに突出したものが
無く、聴いてるとどうも聴き流してしまう。フックが少ないのはプロデュースのせいか
楽曲のせいなのか判断が難しいが、これまでの楽曲にあったような強く惹かれるような
世界からはやや遠い気がする。

確かにギターの録り方はキラキラしていて、エコーやリフを上手く利用したような感じが
多く、それがジョン・リヴァースの得意とする部分なのかとは思う。ただ、逆に2007年という
当時でも相当レコーディング技術は進んでいて、そういう時代の割に抜けの悪い音が
意図したものであっても、この時点で15年以上のキャリアを誇るオーシャン・カラー・シーン
程のバンドのサウンドとしてこれで良いのだろうかと思ってしまうのである。

ただ、ある意味バンドとしてセールスをある程度期待された時代が終わって、一度
生まれた時の原点まで戻る必要は有ったのかもしれない。

それが『モーズリー・ショールズ』以前のインディ・バンドだった時代だったのでは
無いだろうか。まぁでもそれもある意味はこじつけで、やっぱり資金的な問題と
バンドとしても成功後これまでに無い落ち込みの中で模索している時代だったのだろう。

個々の楽曲にも触れておくと

1曲目「アイ・トールド・ユー・ソー」はキラキラしたポップソングでアルバムでも
ベストトラックだと思う。曲の下敷きは初期フーのようだけど、この楽曲がまるで
初期の「イエスタデイ・トゥデイ」の系譜に聴こえる。2分少ししかないシンプルな
楽曲だが、この曲の出来は良い。ただ、アルバム全体でいきなりベストトラックが
来てしまうのだが。。


「I Told You So」 Ocean Colour Scene

2曲目「オン・ザ・レイライン、ウェイティング」はパワフルなロックナンバー。
ただ、これも2分ほどの作品で展開は殆ど無く終わる。

3曲目「フォー・ダンサーズ・オンリー」はポール・ウェラー作曲のナンバーで
彼がアウトテイクにしていたものを譲り受けてオーシャンで録音したもの。
派手さは無いけど、切れ味は流石で、ウェラーの曲を違和感なく演奏できるのは
オーシャン・カラー・シーンならでは。今作ではこういう切れ味の有るナンバーが
少ないので調度良いと思う。

6曲目「ゴー・トゥ・シー」は今作で唯一と言って良いオーシャンらしい
ロックナンバー。マイナーを基調としながらも演奏で強弱をつけてグイグイ
引っ張っていく。今までならもう少しアレンジに気を利かせるだろうが
ここではバンドの音だけでシンプルに聴かせる。

7曲目「ディーズ・デイズ・アイム・タイアド」はスティーヴ・クラドックが
ヴォーカルを取るナンバーで、恐らく彼らのアルバムでは初めてだろう。
過去には『ワン・フロム・ザ・モダン』のボーナス・トラックである
「カーネーション」のカバーで歌ったことは有ったけど、あれは実質ソロだから
これが初めてということになる。「カーネーション」の頃はかなり甘い感じの
ヴォーカルだったけど、ここではハスキーな歌声である。

まだ習作的な感じもするけど、こういう部分がこの後リリースされ始める
彼のソロ・アルバム辺りに反映されていくのかもしれない。

10曲目「ロンリースト・ガール・イン・ザ・ホール・ワイド・ワールド」は
比較的楽曲単位では弱い今作の中では一聴で耳を惹かれる楽曲で、
アコースティック中心だが、気の利いたヴォーカルエフェクトやサビのメロディや
アレンジの美しさは彼ららしく素晴らしい。何というか『モーズリー・ショールズ』
前後のB面曲に有ったようなアコースティックとエレクトリックをオーシャンらしく
ブレンドしたようなナンバーである。当時のB面集『Bサイズ・シーサイズ&フリーライズ』
辺りに入っていても良い感じである。

後半はアコースティックで地味めな曲が続き終わるのでここで細かくは書かないが
全体として、バンドの立ち位置は前作より立てなおしている。だが、逆に楽曲や
プロデュース(アレンジ)は今までほどの煌めきは見せられてないのが今作と言える。
楽曲個々の出来は好き嫌いは別としても前作の方が良いのがより印象を薄くしている。

まぁそれは結局資金的な問題のような気もするし、彼らの作曲やアレンジへの取り組みも
できるだけシンプルにという事だったのかもしれない。

最初に書いたように、このアルバムを聴いた当初は90年代、時代の寵児だった彼らが
インディのバンドのようなサウンドをまた聴かせるようになったことに時の流れと
結局セールスには抗えない現状が有るんだなと少し寂しい思いが過ぎった。

今作は最高位37位と、更に前作を下回る結果になってしまったが、逆に自主レーベルとも
言えるインディ・レーベルからの再出発としては意外に健闘した。

やっぱりオーシャン・カラー・シーンに求めてるものは音であれ、佇まいであれ
クールでブレてないものをファンも求めて居る結果が予想外の健闘だったと思う。
今作はまだ復帰過程だけど、オーシャン・カラー・シーンが前作で失ったものを
取り戻すプロセスとしてファンは見ていたのではないかと思う。

そして、この後各自がソロ活動などを中心に、暫くのブランクの後力作
『サタデー』を作成することになる。


posted by cafebleu at 00:31| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Ocean Colour Scene | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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