2012年08月19日

Rainbow Magic

※当初UKポップ特集に戻ろうと思い、途中まで手を付けていたUKポップ特集用のレビューも
2バンド分夏休み中にまとめたのだけど、せっかく"高野寛+伊藤大助"の東京公演も
8/24に近づいており、僕は観に行くので引き続き彼の作品について少し続けたい。


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"久々に伝家の宝刀を抜いた会心のカラフル・ポップ・サウンド"

『Rainbow Magic』('09) 高野寛



UKポップと交互のように高野寛さんを特集してるけど、
いよいよ8/24のライブも近いので自分的に盛り上げてる。

前回は初期の2作を紹介したので、彼の近年のアルバムも
ここで取り上げてみようと思う。

最新のところでは2011年の『カメレオン・ポップ』というアルバムが
リリースされているけど、近年の重要作としては2009年の『レインボー・マジック』かなと
思うので、これについて書こうかと。

2004年の『確かな光』以降、ベスト盤を除くとオリジナル・アルバムのリリースから
しばらく遠ざかり、ソロ名義での活動はほとんどしていなかったと思う。
実際は細野晴臣やYMO(HAS)のサポートや、大きなものでは高橋幸宏と原田知世が集った
pupaへの参加もあった。しかしながらソロとしては比較的ブランクが空いていたのが
この時期だったと思う。

『確かな光』辺りまでは、打ち込み系のサウンドを取り入れつつも、どちらかと言えば
肩肘を張らない大人のサウンドメイクで、サウンドの中心にはアコースティックギターが
配されてるような、そういうポップの一線からはやや退いたような落ち着いた佇まいの
アルバムが続いていたのだが、デビュー20周年で久々にメジャーレーベルに移籍したことも
関係したのか、2009年の『レインボー・マジック』では久々にカラフルな高野寛サウンドが
散りばめられている。

先ず予告シングルとなった「LOV」が秀逸で、pupaから持ち帰ったようなスイートなシーケンスと
高橋幸宏による鋭いリズム、そして本人楽曲によるポップなメロディが渾然一体となって
素晴らしいポップ・サウンドを奏でている。


「LOV」('09)

それに続いてリリースされたのがこのアルバム『レインボー・マジック』という訳だが
アルバム全体も内容は非常に充実している。

ゲストにはpupaから師匠でもある高橋幸宏、お馴染みクラムボンの原田郁子、ハナレグミ、
コトリンゴ、そして細野晴臣に忌野清志郎(昔の二人のデモからマスターまで起こした)と
先輩後輩が20周年に合わせて集っているような印象だ。

アルバム全体に触れていくと、

1曲目の「Hummingbird」はアルバムの序章を飾るインストで、少しスピリチュアルな
印象の聖歌隊のようなコーラスにコトリンゴのピアノが音響的に利用されている。
そしてそれが導入になって先述の「LOV」に続いていく短い小品だが印象的である。

3曲目「道標」はカルテット位のストリング編成のリフに導かれて始まる優しい
メロディのポップ・ソング。サビ前のつなぎのメロディが高野寛の定番的な感じがして
ファンには嬉しい一曲。

4曲目「Timeless」もストリングがアレンジの主体にある楽曲。
打ち込みやギターは少しファンキーにまとめてるが、メロディやアレンジ全体は
柔らかめで彼らしい印象で、個人的にお気に入りの一曲である。

6曲目「each other」は恋人との距離や別れを抽象的に描いたと思われる
メランコリックな作品で、少し悲しげなウクレレからサウンドが徐々に
フルバンドになっていくような構成で、サビでアレンジが開けていくような感じだ。
こういうラブ・ソングの描写の上手さや、それに乗るメロディやアレンジの切なさは
彼にしか出来ない世界観で、彼の作品の中でも名曲の部類に入ると思う。

因みにドラムは坂田学である。

7曲目「CHANGE」は全編でクラムボンの原田郁子とオクターブのユニゾンで
歌う、ふんわりとした音響が包む抽象感の強い楽曲で、細野晴臣がベースを
弾いている。何となく90年代サブカルチャーを強く感じる一曲で、中々
良い曲では有るが、後輩である原田郁子の存在感のほうが強い感じがする。

8曲目「今日の僕は」が忌野清志郎との共作曲で、実際は92年の作品『tha@nks』の
頃のアウトテイクを素に作品化したもののようである。このアルバムリリースの
時点で既に忌野清志郎本人は他界していたので、貴重なテイクとなった。
忌野清志郎本人も12弦ギターとコーラスで参加している。

9曲目「小さな"YES"」は派手な曲ではないが、彼らしい良質のメロディが
包み込む楽曲である。

12曲目「PAIN」はアルバム後半のハイライト的な存在のスケールの大きな楽曲で
彼らしいシンコペーションの多めなAメロから始まるが、サビ自体はジョンの
『マインド・ゲームズ』のようなアレンジで、ジワジワと盛り上がっていき
後半のサビのパートを繰り返していくパートは感動的な展開である。

13曲目「明日の空」は彼にしてはラフなアレンジのシャッフル・ポップだが
一聴してそれと解るコーラスを歌うのはハナレグミである。
高野寛本人が弾くベースがもろにビートリーだったりと聴き所は有るのだが
少しハナレグミとのハーモニーにマジックが起きていないかなと思ってしまう。
ちょっとハナレグミのパートが雑すぎる気がする。忙しいのかな。

15曲目「Black & White」は本作からの2ndシングルになった、彼にしては
ロックな雰囲気の有る楽曲である。しかし、ロックとは言ってもそこは高野寛
マイナー系のメロディで始まりつつもメジャー系コードへの進行の妙も味わえる
気の利いたシングルらしい楽曲で、こういうシングルっぽい曲でのキラメキが
近年のアルバムでは聴けなかったので「LOV」と共にこのアルバムで主役級の楽曲
として重要な役割を果たしている。


「Black & White」('09)

そして最後の16曲目にはボーナス的に「虹の都へ」のセルフ・リメイク・ヴァージョン
が収録されている。結構音を出したりする楽器やリズムは変わっているのだが
基本的なアレンジの素は変えてないのか、大きな違和感なく、この曲の基本的な良さは
変わらないといった印象である。

レコード会社の意向も有ったのかもしれないけど、それにしてもメジャーレーベルに
戻ってきて、敢えて自分をそのシーンに引き上げたこの楽曲ともう一度向きあったことは
彼の意志であると、そう僕は感じている。

相変わらずアルバム全体の粒ぞろい感は相変わらずで、僕は時にこの平均的な
レベルの高さがかえって突き抜けて聴こえないので、彼を"玄人志向"にして
しまっているのではと邪推する時が有るのだけど、今回はそれに加えてメジャー
シーンも意識したような楽曲のカラフルさや、多彩なゲストによるバラエティも
有るのでポップな玉手箱的としても聴きやすく、かつ理想的な作品のようにも思える。

ここまでの彼の作品ではベスト3に入るような、そんな力作だと感じている。

サウンド云々ではなく、流れとしては、やはりゲストが多数参加して多彩な感じに
映った95年の『Sorrow and Smile』に雰囲気が似てる感じもする。
この時は「夢の中で会えるでしょう」という後に多くのミュージシャンにカバーされる
名曲を生み出している。

僕個人の感想だけど、高野寛という人は玄人好みとか、僕らの世代のように90年代に
サブカルチャー・ブームが有って、その中で彼を先人的に評価し、尊敬した人達によって
ミュージシャンズ・ミュージシャンとしては常に高い評価を得てきたと考えている。

しかしながら、彼は好事家のコレクションに留まるような才能ではなくずば抜けたモノを
持っている。それは逆にそういったサブカルチャーのミュージシャンとの共演の中で
やっぱり強く感じるのである。だからもっともっと幅広い支持を得ても不思議ではないと
思うし、これからも歳相応に枯れていくだけでなく、もっとカラフルでポップでキャッチーな
世界観を聴かせて欲しいと、長く彼を応援してきた者としてそう願っている。

いよいよ8/24は彼のライブなのでその日が今から楽しみである。


posted by cafebleu at 23:55| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 高野寛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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