2012年08月16日

CUEの時代とAWAKENING その2

さて、続きを書こうかな。今が比較的時間が有るので。



先に書いた通り、90年の『CUE』と91年の『AWAKENING』は
双方ともトッド・ラングレンが連作でプロデュースしており
内容的にも兄弟作と言えるかと個人的には思っている。

実際この時期のライブでは上記のアルバムからの選曲が
主になっている。

恐らく『CUE』収録の「虹の都へ」の大ヒットも有ったので
レコード会社等の保守的な意志も働いての連続でのトッド起用と言うのも
有ったのかもしれないが、そのヒットも功を奏して『AWAKENING』には時間も
お金も割かれている、そんな風にも感じる。

そういった意味でもトッドとのコラボレーションということでは
このアルバムではより深化しているとも言えるのではないだろうか。

このアルバムでの大きな違いを上げるのなら、インスト曲が多いことだ。
全14曲中、実に5曲がインストである。それらは同じメロディを異なるアレンジで
聴かせたりと、全体のコンセプトをまとめるような働きをしているのも特徴だ。

1曲目の「Proteus March」はかなりユートピア風味なインストで、ちょっと
クロスオーバーのようなサウンドなのも特徴だが、この時代らしいと言えば
そうなのかもしれない。そして、ここで出てくるメロディがアルバムを通底する。
いきなりトッド色が強く打ち出され、ヒットの自信も得てかこのアルバムでは
ある意味やりたい放題トッドの魔法が炸裂する。

2曲目「目覚めの3月」に合間なく繋がり、コンセプト感も高い構成である。
この曲も比較的有名な楽曲だろう。少し癖が有りつつもこの頃の彼らしく
比較的キャッチーにまとまっている。

3曲目「Smile」は大凡この当時の日本人が作るとは思えない洋楽的なセンスの
楽曲で、かなり風変わりな変態ファンク・ポップと言った趣向である。
ギターのサウンドがトッドっぽいなぁと最近聴いて改めて思ったりする。
なんだろう、もしかして二人はビートルズの「タックスマン」のような曲を
やっているつもりなのでは無いだろうか。そうだとしたら恐ろしい。。。
個人的にはかなりお気に入りだが。

5曲めもファンキーに始まりながらおかしなベルのようなキーボードが炸裂して
錯乱状態の楽曲である。で、歌詞も「テレパシーが流行らないのは理由がある」
みたいな感じで、好き放題やってるが、ポップとしては完成してる。

8曲目「エーテルダンス」はファンにも人気のワルツな名曲である。
タイトルなんかも含めて彼にしか生まれ得ない一曲だと思う。

9曲目「Our Voices」はキーボードのイントロを聴いた瞬間にポップ好き(トッド好き)なら
ニヤッとしてしまうだろう。明らかにトッド・ラングレンの「Fade Away」を思わせるピアノの
イントロから始まる。最も曲としてはもう少しメロディアスで美しい楽曲で、そこには
完全なオリジナリティが有るけれど。


「Our Voices」('91 Live)

11曲目「ベステン・ダンク」は引き続きミズノのスキーウェアCMに起用された代表曲で
詳しい説明は不要だろう。キャッチーなサビとシュガーコーテッドされたサウンドが
耳に馴染みやすく、個人的には彼の楽曲で最も好きな曲の一つである。

この曲が彼を深く知りたいきっかけになった曲なので。
子供の頃の記憶力も手伝って、この曲のCMは比較的鮮明に覚えている。
こういうスキーを洒落て楽しもうみたいな文化が流行っていた頃で、バブルの
影響も有って派手にCMも展開されていたなと、そんな事を想い出す。

文句なしにキャッチーなサビから始まって、途中のブリッジ辺りまで含めて
完璧な楽曲なのだが、今聴くとトッドのシンセ重ねも炸裂していて好き放題な感じ。
でも、そんなサウンドが冬のCMにピタっとハマってヒットに繋がったのかなと思う。

13曲目「こだま」でこの時代にしてはかなりアンビエント的な世界観を提示して
アルバムは終わっていく。でも、何処かブライアンの『ラブ・ユー』のような
サウンドにも聴こえるのはこの二人の趣味だろうか。

ラスト「船に乗った魚」はノスタルジックな感じのインストで、このアルバムを
静かにクローズしていくような役割を果たしている。今聴いてもこの曲はほとんど
印象が変わらない。そして切ない気持ちになるのだが、それは歳のせいかより多く
感じ取るようになっている。

全体としては純然たるヴォーカルのある曲は9曲で、後はテーマメロディをアレンジしながら
聴かせるインストが入っている構成なので、もしかしたらヒット後の
アルバム制作スパンを少しでも縮めるために急いでレコーディングに入ったのかも知れない。

そういう意味で楽曲数は意外にも多くないのだが、それを埋めるためであれ、
全体をリンクさせているインスト曲にも効果が有るし、予算やヒットに支えられ
サウンドには全体的に余裕を感じられる気がする。彼ららしさも前作以上に強く
出ていると、そんな風にも邪推できるのがこの『AWAKENING』なのである。

これを最後にトッドとは袖を分つので、そういう意味でも貴重な一作だし
ここから先の彼は徐々にメインストリームから離れていく印象も有るので
自身がヒットやサウンドメイカーとしての才能だけではなく、存在としても
アイドル的な感じを持ちながらバリバリのフロントマンとして活動していた時期の
一つの頂点としても、このアルバムはそんな高野寛の瞬間をパッケージしたアルバムだと思う。

時代を感じるが、時代を感じるから今が有る訳で、その中にある楽曲の芯は
少しも錆びれていないし、今の彼に続いていく道のように思えるのである。
それが有るから2000年代以降、僕らの世代のミュージシャンにリスペクトされたのだと
僕はそんな風に思いたい。


「夢の中で会えるでしょう」高野寛+坂本龍一

また、機会を見て、彼の最近作なんかも触れていきたいと思う。


posted by cafebleu at 00:11| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 高野寛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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