2008年07月23日

22Dreams

”僕的には久々の傑作、そしてスティーヴ・ホワイトとの別れ”

『22 Dreams』 by Paul Weller

いやはや、とんでも無い油断をしてしまった。

ポール・ウェラーのアルバム、2週間ほど前に出ていたのは知っていたが
何となくいつでも良いなと思ってCD屋まで赴かずにいた。

勿論最近仕事が忙しいと言うのもあるのだけど、土日にまったく休みが
無いと言うわけでも無いので。

彼のアルバムと言うのは新作でも最近は自分の中で予定調和的な
部分があって、慌てて買わなくても大体中身の予想はつくと言う
気分であった。

特に前作『アズ・イズ・ナウ』辺りでそれは顕著で、高い評価と裏腹に、
作品の充実は認めつつも、何処かアルバム全体に既出感ばかり
感じてしまって素直に楽しめなかった。

正直1曲目の「ブリング・アンド・ユー・ウィル・ミス・イット」を聴いた瞬間に
「あぁ、またいつものマイナーロックか」と思ってしまった自分が思い出される。
でも周囲の高い評価と「ジャムみたいな曲が帰ってきて新鮮」みたいな
事も聞いたが、はっきり言って

「ジ ャ ム の 何 処 が 新 鮮 な ん だ」

と古くからのファンには思えて仕方が無かった。

このアルバムに関しては以前ここで書いているのでそちらが
その時の気持ちに忠実だろう。

実際のところ、ライブでの充実したステージングとそこでのアルバム曲の
パフォーマンスの高さに感動して、これはこれでウェラー自身が気力充実で
作り上げたものなのだなと後々納得はしたのだけど。

最もそれ以前のアルバムも『スタジオ150』ではロックサイドのカバーが
勿体ぶっていて、素直にスモール・フェイセズとかやればいいのにとか
思ってしまったし、更に前の『イルミネーション』は明らかに彼に迷いが
見えていた時期だったので作品としてはソロ以降一番厳しいと感じていた。

そういう意味では、個人的には彼の作品に長いこと肩透かしを喰らうような
気分に陥っていたので、新作だと言うことでこちらが高まると言うような
事が無くなってしまっていた。勿論ファンを止めた事も無いし、その間のツアーも
全て行っているので、好きこそ故の厳しいファン目線なのだが。

と言う訳で、新作『22ドリームス』である。



このアルバム、本当に久々の快作と言って間違いないと思う。
何よりも彼のアルバムでこんなに一聴でバラエティに富みつつ清々しく感じる
作品自体が初めてなのではないだろうか。

また、今回のアルバムには今まで必ず有った様な如何にもな”キラー・チューン”が
存在しない。つまり簡単に言えばそれは「サンフラワー」であったり、「チェンジング・マン」で
あったり「ヘヴィー・ソウル」のようなナンバーだ。

こう書くとマイナスのように聴こえるが、少々この手のナンバーが型にはまり過ぎている
傾向があったので、これはこれで潔く感じ、好感を持てた。

また、まだ聴いて浅いのでこれから印象が変わるかもしれないが、アルバム全体が
一つの流れの中で自然と耳に入ってくる、コンセプト・アルバムのようなイメージがある。

一曲、一曲は決して強くないのだが、それが自然と流れて一つの形になるように。

1曲目の「ラスト・ナイト」のストレートなトラッドへの傾倒っぷりの潔さも気持ち良い。
これを聴いたときにまるでエディ・リーダーのトラッド・アルバムのようになるのかと
思ったが、アルバム全体はよりカラフルな世界を見せる。

そう、カラフルと言うのが今までのウェラーの全ての作品でもほとんど記憶が無いのだ。
ずば抜けたキャッチーさは無いのだけどとてもポップなアルバムだと思う。

こういう玉手箱的なポップさはジャムでもスタカンでも余り聴いたことが無い。

続く「22ドリームス」では新進気鋭のモッド・バンド、リトル・バーリーの若々しい
バッキングも清々しい。

今回象徴的なのが、スタカン時代から長きに渡りウェラーを支えてきた
スティーヴ・ホワイトのクレジットが無い事である。
(厳密には一曲のみあるが、そこもクラドックのドラムがオーバーダブされている)

今回の面子は上記のリトル・バーリーや元ブラーのグレアム・コクソン以外は
その演奏のほとんどをプロデューサーのサイモン・ダインとオーシャン・カラー・シーンの
スティーヴ・クラドックが担当している。プロデュースも三人の連名だ。

ウェラーもベースやピアノなどを今回は多く担当しているようだ。

そして、驚きなのが多くのドラムをスティーヴ・クラドックが担当している事!
いやはや、彼がマルチ・プレイヤーなのはオーシャンのファンにはお馴染みだが、
基本的にはリード・ギタリストである彼がドラムでこんなに貢献するとは・・・。

これ程までに良いドラム・プレイが出来るとは思わなかった。
きっとマッカートニーよりずっと上手い(笑)。

第一弾シングルの「ハブ・ユー・メード・アップ・ユア・マインド」のドラムも
彼のプレイによるものだ。


「Have You Made Up Your Mind」('08) Paul Weller

元々スティーヴ・ホワイトの一本調子なドラムはウェラーのソロ以降の
音楽性の広がりの足かせになっているような気が『スタンリー・ロード』辺りから
顕著に感じるようになっていたのだが、クラドックを中心にさまざまなドラマーが
新しい風を吹き込んでいるのも今作の大いなる特徴と言えるだろう。

残念なのは、ホワイトと同時に前作まで参加していた元オーシャン・カラー・シーンの
デーモン・ミンチェラも姿を消しているところか。
個人的に彼のどっしりとしたベースは好みだったのでこの点は少々残念である。

しかし、どちらにせよ、ここに来て熟練と新鮮さを併せ持つ素晴しいアルバムを
提供してくれたウェラーには頭が下がるし、ファンで良かったと思うのである。

また、もう少し聴きこんだら私的なレビューを。


posted by cafebleu at 22:32| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | Paul Weller | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 22 Dreams 考えてみると前作が娘がまだ妻のお腹の中にいるときだったから、娘の成長を考えると感慨深いものがあります。師匠50歳の渾身の一作はあいも...
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