2006年03月20日

A Year Late

”ポール・ウェラー 来日前特集その8”

「B面にこだわりを見せるところがコレクター気質」


ここまではオリジナル・アルバム、もしくはスタジオ録音盤に
焦点を絞ってレヴューを書いてきた。
『デイズ・オブ・スピード』のようなアコースティック・ライブの
ほかにも『ワイルド・ウッド』に伴うツアーの様子を
収めたライブ盤『ライブ・ウッド』や1st『ポール・ウェラー』から
『ヘヴィー・ソウル』までの足取りを辿ったベスト盤
『モダン・クラシックス』などもあるが
それらは一部を除き既出のものであるのでここで詳しくは書かない。

それらよりも貴重だと思うコンピレーション盤が
コンパクトBOX3枚組の形態でリリースされた
アルバム未収録曲集『フライ・オン・ザ・ウォール』だと言えるだろうか。



正直シングルがマキシ・シングル
(3〜4曲収録されているシングル)の時代になったとは言え、
これだけアルバム未収のマテリアルが10年ほどで
揃ってしまう辺りが、ウェラーの「コレクター気質」を
垣間見せる。そしてそれらアルバムから漏れた楽曲たちは、
決して単なる穴埋めの「B面曲」な
だけではなく、シングルまで追っているファンのためへの
サプライズも多数用意されていた。

優れたB面曲と言えば、
英国ミュージシャンの伝統では無いだろうか?
そう、ビートルズが正にそうだった。
「ドント・レット・ミーダウン」「アイ・アム・ザ・ウォルラス」
「レボリューション」「エリナー・リグビー」「レイン」、
これら有名曲が全てB面曲で、ここに書いた曲のうち
オリジナル・アルバムに収録されたのは
「エリナー・リグビー」(『リボルバー』収録)だけなのだ。
(「アイ・アム・ザ・ウォルラス」が収録された『マジカル・ミステリー・ツアー』は米キャピトルの編集盤)

こんなシングルの重みを良く知る世代であるウェラーは
ジャムの頃からシングルでしか聴けない
楽曲が多かった。アルバム未収に凄まじいマテリアルが
あるミュージシャンと言えば同期のコステロも
そうで、その量はウェラーをはるかに上回ると言うか、
とても追いかけきれないのだが、
やはりビートルズ世代にとって「アルバム未収」に
価値を見出すのは一つの病なのかもしれない。

そういう意味ではこの編集盤の価値は全てのシングルが
行き届かない日本などで大きな意義がある。
これが出るまで「アイ・シャル・ビー・リリースド」が
収録された『アウト・オブ・シンキング』の限定シングルは
とても高価な値段で流通していたし、
「セクシー・セイディ」の見事なカバーはB面だけに埋もれさせるには
余りに勿体無かった。

編集盤『フライ・オン・ザ・ウォール』は単なる穴埋め曲の
寄せ集めでは無く、もう一つのウェラーが
垣間見れる貴重な音源集だと思う。

3枚組なので全てについて書いてると終わらないが、
1枚目がミックス違い中心か。
1st収録の「ニュー・シング」のリミックス・ヴァージョンで幕を開ける。
これがなかなか元気のあるアレンジで結構好きだ。
目玉は「イントゥ・トゥモロウ」の初期ヴァージョンだろうか。
しかしながらこれは明らかにアルバムに
収録されたヴァージョンの方が良かったりする。
「エンド・オブ・ジ・アース」はSSW的な
ピアノが印象的な軽やかな曲。
「ディス・イズ・ノー・タイム」はウェラー流ブルーズと言えば良いか。
ややクラプトンを思わせる。
「ワイルド・ウッド」はポーティスヘッドによるリミックス・ヴァージョンで、
予想通りの「アブストラクト」な仕上がりとなっている。
他にもブレンダン・リンチの音響感覚が
冴え渡るインストなどが入っている。

2枚目は「B面曲」らしいB面曲か。
「シュート・ザ・ダヴ」はザ・バンドのロマンチズムをウェラーなりに
解釈した歌と言った感じ。
「エブリシング・ハス・ア・プライス・トゥ・ペイ」は
映画『フェイス』の主題歌として使用された歌で、
この映画のハードボイルドな
雰囲気にぴったりの渋いアコースティック・ソングだ。
「リバー・バンク」はジャム時代の「リバー・バンク物語」の
再録。ジャム時代よりも60年代的ソフト・サイケ感を
強くしたような仕上がりで、繊細な雰囲気がとても良く、
オリジナル・ヴァージョンよりも個人的には好きだ。
「ア・イヤー・レイト」は凛とした佇まいが印象に残る
お得意の「マイナー」系の歌でウェラーの
ネクラなヴォーカルが冴え渡る。
彼のアコースティック・バラードの中でも1、2を争う
名曲だと思う。有名曲ではないにも関わらず、
大事なイベントなどでは取り上げているので
本人もお気に入りなのでは無いだろうか?

3枚目はB面で聴けた貴重な「カバー」たちだ。
これらを目当てにこのアルバムを買った人も多いのでは
無いだろうか?ここでは『スタジオ150』とは違い、
わかりやすく、彼らしいチョイスのカバーを
素直にやっていたりするので、その率直さが逆に良かったりする。
「フィーリング・オールライト」はトラフィックのカバーで
はっきり言ってほとんどそのまんまである。
歌い方もデイヴ・メイスンのようだ。
「オハイオ」は言わずもがなのニール・ヤング。
ギンギンの「オレ流」ロックに仕立ててある。
「ブラック・シープ・ボーイ」は60年代のフォーク・シンガー、
ティム・ハーディンのカバー。
これはスモール・フェイセズがやはり彼の「レッド・バルーン」を
カバーした事に対する「モッズなりの敬意」を表している
ような気がする。こういうところが「コレクター」。
「セクシー・セイディ」はこれも説明不要なビートルズのカバー。
オリジナルの持つ良い意味で不穏な雰囲気を一掃し、
勝手に米南部的にざっくり仕上げてるのだが、
これがかなり素晴らしい出来で難しいとされる
ビートルズのカバーをセンスとビーヲタ心?でこなしている。
「アイ・ウッド・ラザー・ゴー・ブラインド」は
エッタ・ジェイムズのカバーなのだが、このR&Bのカバーが
僕は一番好きだったりする。ジャムの頃の青さが
いけないとは思わないし、それも素晴らしいのだけど、
そんな青くて、初期のカバーなどでは正直「?」という
感じの出来もあったウェラーが少しづつ
歳を重ね、こんな渋いR&Bを物にしているさまを見ると、
なんだか感動してしまう部分がある。
歳をとるのも悪くないな、と。

他にも色々聴き所はある。ウェラー・ファンなら
買って損をする内容ではないので是非。


posted by cafebleu at 10:38| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Paul Weller | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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