2013年11月29日

Mechanical Wonder

"成功の後、モダニストは内省に向かう"


『Mechanical Wonder』(2001)

『モーズリー・ショールズ』『マーチング・オールレディ』『ワン・フロム・ザ・モダン』
の90sモッド・ロック三部作がそれぞれ成功し、ブームや瞬発力だけのバンドで
無いことを証明してみせたオーシャン・カラー・シーン達は、この頃それを
どんな風に受け止めていたのだろうか。

デビュー後の不遇時代を引き上げてくれたのがウェラーで有ったり、ブリット・ポップ
というネオ・ブリティッシュ・インベンションとも言えるブームだったわけだけど
その時代は終焉し、世の中はそれらをレトロで退屈なものと扱っていた。

ポール・ウェラー自体も『ワイルド・ウッド』『スタンリー・ロード』『ヘヴィー・ソウル』
と続いた骨太な三部作の後にレトロの象徴として批判されている時期だったと思う。
本人もこの頃『ヒーリオセントリック』という内省的なアルバムをリリースした時期だった。

そんなウェラーに呼応した訳では無いだろうけど、ブームを牽引しながらも本質的には
ブリット・ポップとも異なるオーシャン・カラー・シーンにとってこの時代は
色々考えさせられる時代だったかもしれない。ブリット・ポップの直後から流行っていた
UKテクノ(ブレイク・ビーツやアブストラクトなど)もこの頃には飽和し始めていたし
オーシャン・カラー・シーンはそのブームに乗るようなデジタル・ロックも展開しなかった。
それでも前作『ワン・フロム・ザ・モダン』は堂々モッドなスタイルで乗り切ったので
充実感も有っただろうと思う。

しかし、大きな成果を続けた後、直ぐに誰でも次のステップに向かえるわけではないし
時には思い悩んだり、内省的な世界に入る時も有るだろうと思う。

簡単に言ってしまえば『メカニカル・ワンダー』はそういうアルバムと言うことが出来る。

僕もこのアルバムの発表直前まで『ワン・フロム・ザ・モダン』でカラフルでモッドな
ロックスタイルを確立させた彼らが次に何をするのだろうと期待いっぱいで待っていた
事を思いだす。

この頃からインターネットとかも充実してきた時代で、OCSのサイトも良く見ていた。
そこで、アルバムからの新曲「アップ・オン・ザ・ダウン・サイド」のPVを見た。


「Up On The Down Side」 Ocean Colour Scene

このオーシャン流ノーザン・ソウルとも言える楽曲とザ・ジャムなどがデビュー時代に
ライブを行っていた聖地とも言える100クラブでのライブ風のPVに当時の僕は心躍った。
今度はこう来るかと、そんなふうに思っていた。

僕はPCに触り始めるのが遅い方だったのでこの頃インターネットの素晴らしさを実感
し始めていた頃でも有ったのでそれも絡めて良く覚えている。

しかし、実際アルバムがリリースされるとその期待は全く見当違いだったことに気づく。
アルバムは終始サイモンの世界観で貫かれるアコースティック中心の世界観で、
内省的な内容だったからである。

ここまでの通り今作は先行シングル「アップ・オン・ザ・ダウン・サイド」と一部を
除くとサイモンのカラーが強く、スティーヴ中心と思われる楽曲も今までよりトーンが
渋かったり、前作までで見せていたような派手なアレンジは抑えられている。

最初は「アップ・オン・ザ・ダウン・サイド」以外の余りの地味さに落胆したのを記憶してる。
アコースティックなサイモン中心の歌もこれまでだってある意味アルバムの中核なのが
オーシャン・カラー・シーンなのだけど、それにしてもメロウだったり物悲しげな楽曲が
多く、比較的明るい曲がミドルテンポのアコースティックな「メカニカル・ワンダー」
位で、後の曲はかなり内省的で、まるで70年台のS.S.Wのアルバムでも聴いてるかのような
俯いたような印象だった。少なくともそんなオーシャン・カラー・シーンのアルバムは
初めてだったので戸惑ってしまった。

あと、常にオーシャンのキーになっているモッドな味付けで今までと違う所は、そのソースが
スモール・フェイセズからザ・フーにシフトしたことであろうか。実際にトリビュート用の
カバーでザ・フーの「エニウェイ・エニハウ・エニホェア」をカバーしているのでそんな
機運も高まっていたのだろうけど、それがまた違和感に拍車をかけていた。
僕は彼らにはスモール・フェイセズやマンフレッド・マンを意識して欲しいのである。

そんな感じで当初は期待が淡くも違う方に向かってしまったという印象ばかりが残ったけど
彼らも一つのターニングポイントだったのだろうし、時代に飲み込まれるのか、
時代に迎合するのか、もしくは時代と違う自分の道を行くのか、思案していたのだろうと思う。

その結果は次作でのレビューに譲ることとして、今作は長く聴いてる内に地味ながらも
深みは有り、またサイモンのソングライティングが一つ完成されて今後の軸になるような
路線も有るというところで決して駄作ではないと思う。

内容をざっと紹介していくと

1曲目「アップ・オン・ザ・ダウン・サイド」はファーストシングルになった楽曲で
ある意味今作のベストである。クリーンなカッティングから16ビートが聴こえて来て
そこにヘヴィーなリズム隊とスティーヴらしいドライブしたギターリフが流れて
ソウルフルなサイモンのヴォーカルが乗って行く。理想的なブルー・アイド・ソウルで
更には70年代のソウルがベースなのがまた嬉しい。当時では完全に時代に取り残されたような
楽曲だったと思うが、ベスト10台に乗るスマッシュヒットを記録した。
因みにスタイル・カウンシルのミック・タルボットも参加している。2000年代の
スタカンと言う解釈なんだろうか。

しかし、前述のとおりこの楽曲の異様なキャッチーさがアルバムと乖離していて
リスナーの混乱を生んだような気がする。日本ではオーシャン・カラー・シーンの
楽曲だと最もこの曲が人気の高い楽曲のようである。

2曲目「イン・マイ・フィールド」はシーケンスのような音から一気にバンドのサウンドが
流れてきてオーシャンらしいロックナンバー。早速ザ・フーのようなテイストが入ってるが
どうももう一歩展開がいつもほど無くて悪くないけど食い足りない感じも。

3曲目「セイル・オン・マイ・ボート」で早速黄昏初めてしまうが、それが今作の特徴。
この後の雰囲気はここから最後まで続いていく感じである。

5曲目「ウイ・メイド・イット・モア」はストリングスが美しい楽曲。サビの
広がるような展開は今作以降サイモンが得意とするジェントリーな仕上がりである。

6曲目「ギヴ・ミー・ア・レター」で久々バンドらしいロック・グルーヴが聴けるが
これまでに比べてかなり抑えたトーンではある。オルガンの音がクールだけど
ちょっと今までより渋い仕上がり。これまで派手目だったブレンダン・リンチの
プロデュースも、今作ではサウンドエンジニアのマックス・ヘイズに交代したので
その影響も有るかも知れないが、ダブっぽいギミックは殆ど今作からは消えている。

7曲目「メカニカル・ワンダー」は彼らの人気曲の一つ。地味だの何だの言ってる
アルバムで代表曲レベルの楽曲が有るのだから悪い内容ではないのである。


「Mechanical Wonder」 Ocean Colour Scene

キラキラしたギターのイントロからカントリーっぽいリズムに乗せて終始爽やかに
楽曲が進んでいく。アコースティック中心だけどバンドの演奏も気が利いている。

8曲目「ユー・ア・アメイジング」はアルバム中最も暗めな楽曲で、イントロから陰鬱だけど
マイナーメロディをこれだけ美しく表現できるのは流石である。ワウのギターを美しく
瑞々しく利用している。個人的に好きな曲の一つ。

9曲目「イフ・アイ・ゲイブ・ユー・マイ・ハート」も美しい草原のようなワルツで
これも繊細なストリングスが楽曲を包み込む。60年代バラードのような薫りも漂うが
単なるレトロというよりはサイモンの持つジェントリーな世界が映し出されている。
アルバムのハイライトの一つと言って良い。

10曲目「キャント・ゲット・バック・トゥ・ザ・ベースライン」はお得意のモッド風味の
ロックナンバーだが、いつもよりサウンドは軽めで早いシャッフルが60年代中期のような
ある意味チープ感も漂わせている。

11曲目の地味な3拍子のフォーク風味「サムシング・フォー・ミー」でアルバムは地味に終わる。

日本盤ではボーナストラックとして前述のとおりザ・フーのカバー
「エニウェイ・エニハウ・エニホェア」が収録されている。悪いカバーではないけど
スモール・フェイセズの「ソング・オブ・ア・ベイカー」時のような凄みは無く
シンプルにカバーしているという風情。

これも前述のとおり今作からプロデュースがマックス・ヘイズに変わったが
彼はブレンダン・リンチのサウンド・エンジニアを長く務めていた人なので
そういう意味では70年代風のアナログ感が有ってナチュラルなコンプレッションで
締めるサウンド路線は継承されつつも、よりダブ的なギミックや
音響効果は抑えられているように感じる。最もオーシャン達の作ってきた曲が
地味すぎてそんなアレンジやエフェクティブな世界が似合わなかっただけかもしれないが。

今作は決してこれまでの作品のような強いフックは持ってなかったものの、
ファーストシングル「アップ・オン・ザ・ダウン・サイド」のキャッチーさにも
引っ張られたのか、UKで7位まで上がっている。この時期、この内容を鑑みれば健闘と
言えるかもしれないが、これがユニバーサル時代の最後のオリジナル・アルバムになった。

何度か触れてるように、最初聴いた時にはそれまでの世界と明らかに違う内に向かうような
ベクトルに戸惑い、地味だとか、オーシャンまでも解散してしまうのではないだろうかと
色々な気持ちにさせられたけど、バンドだって長くやれば色々な岐路に立たされる時は有るだろう。

ましてや時代の波と対峙しながら自分たちのスタイルを貫ききって評価を得た
『モーズリー・ショールズ』から『ワン・フロム・ザ・モダン』までの三作を作り終えて
その外向きのモチベーションを保つことは難しいことで、そんな時には内省的になるのが
人間の常でもある。そんな姿に一喜一憂出来るのもファンだからであり、暫く聴いてると
この内省的な世界観こそが、特に作曲をメインで担当しているサイモンのネイティブな
部分なんだろうなという意味で彼の今後が見えるし、バンドも模索していたのだろうから。

最初からこのアルバムを買う必要はないけど、サイモン独特のジェントリーで英国の
ルーツに向かうような世界はこのアルバムから開花してるし、
「アップ・オン・ザ・ダウン・サイド」は文句なしのブルー・アイド・ソウルなので
それを聴くだけでも価値があるアルバムでは有る。
posted by cafebleu at 00:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Ocean Colour Scene | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月27日

ぶどう酒のつぶて その4

・SIMI(シミ) シャルドネ2011(NEWパッケージ)
・総評 4.6
・品種 シャルドネ
・生産地 アメリカ/カリフォルニア/ソノマ・カウンティ
・風味 白中辛口

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色々飲んできたので自分のベースって何処かなという確認も含めて一旦
SIMIシャルドネに戻る。2011年ヴィンテージなのは前回と同じなのだけど
途中で装丁が変わったのでそちらのバージョンを。

やっぱり僕はSIMIシャルドネが一番好き。一番の理由は香りかな。
洋梨っぽい香りが一番香るのはSIMIシャルドネ、解りやすくて良い。
味も甘そうで重厚な中にキレも有る。酸味は弱いけど弱くて輪郭も
ついでに弱くなるワインと一線を画している。

シャブリよりは酸味が少なくてキャッチーなのがカリフォルニアワインってのは
最初に上司に色々教えてもらった時から変わらないイメージなんだよね。
この値段帯でこの味香はベスト。今度フランシスカンも再チャレンジしてみよう。
カリフォルニアのシャルドネは色々知りたいと思う。


・ドメーヌ・デュ・マージュ・ブラン(MAGE Blanc) 2012
・総評 2.8
・品種 ユニ・ブラン45%、コロンバール35%、ソーヴィニョン・ブラン10%、グロ・マンサン10%
・生産地 フランス コート・ド・ガスコーニュ
・風味 白辛口
・フランスワイン格付け VDP(Vin De Pays)

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インヴィーヴォのソーヴィニヨン・ブランと共に酒屋に奨められて購入した変わり種。
結構なミックスっぷりで普段なら余り選ばないタイプのワインだけど隠れたる
美味しいワインとのことで。

感想としては、ソーヴィニヨン・ブランを飲みやすくして香りの癖が落ちて酸っぱすぎない
柑橘系の味香がしてバランスが良くてアルコール度数も低いから食事の共に喉を潤すのに
調度良いと言う感じ。でも結果としては心にも舌にも残らない味香のワイン。
ソーヴィニヨン・ブランは癖が有るけど、それこそが魅力だと理解できた。薄めちゃダメ。

良質なテーブルワインだけど、それならイタリアワインのほうが更に軽くてピザやパスタが
進むような気がする。フランスワインの神経質さも有るんだけど、結局お手頃ワインの域を
抜け切れない、そういうワインだと思う。ガツガツ食べたいときにワインは飲まないので
ワインだけで心が潤されるような、そういう個性の有るワインのほうが好きみたい。
不味くはないけど、Vin De Paysの平均的なワインではないかと思う。
アルコール度数が11.5%で少し低めなのだけど、もっと低く感じる。僕でも2杯位直ぐ飲める。


・ルイ・ラトゥール シャブリ ラ・シャンフルール
・総評 3.4
・品種 シャルドネ
・生産地 フランス/シャブリ/コート・ドール
・風味 白辛口
・フランスワイン格付け AOCシャブリ

IMAG0400.jpg

ちょっとMAGEブランが期待はずれだったので我慢ができなくなって
別の酒屋で重めのワインを探そうと思い、店を見ていたら比較的メジャーだと
言われるルイ・ラトゥールのシャブリがあったので買ってみる。

店では3000円に近く、ちょっと僕には高価なのだがネットではSIMIと
変わらないくらいの2000円台前半で手が届きそうな感じ。

開けてみると香りは、普通と言うかシャブリのほうがきつい香りなんだよね。
でも前回のルイ・ジャドのシャブリとも違う感じ。柑橘っぽさが強いかな。
でもジャスミンみたいな花のような香りにも感じる。ちょっとソーヴィニヨン・ブラン
でも感じるようなアロマ感も有るけど、全体として香りはちょっと弱いかな。

味も酸味が強くて、やっぱりフランスのシャブリよりカリフォルニアの
シャルドネのほうが好みに合ってるのかなと思うのだけどその酸味が
辛みと遠くから来る甘みに奪われて後味は悪くない。酸味が知らないうちに
消えていくような感じかな。

AOCシャブリだし、場所もコート・ドールと言う比較的有名な産地だし
日本の代理店もアサヒビールだし、メジャー系シャブリなのは間違いないと
思うのだけど、まぁそこそこって感じかな。

シャブリならルイ・ジャドの方が好きかも。
posted by cafebleu at 03:40| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白ワイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

One From The Modern

"彼らの最高傑作であり、終わりゆくUKロック・ポップ・ブームの最期を見つめた作品"


『One From The Modern』('99)

当初3枚目『マーチング・オールレディ』を順当に取り上げる予定だったが
どうやら『モーズリー・ショールズ』に続いて15周年記念盤が出るようなので
それを受けてから取り上げることとして、一作飛んで『ワン・フロム・ザ・モダン』
から行くことにする。

最初に言うと、ファンにとってはこの作品が最高傑作という位置づけで大きな
異論は出ないと、そんな風に思っている。また、熱気やブームをパッケージしている
『モーズリー・ショールズ』は別として、オーシャン・カラー・シーンに興味を
持ち、もっと聴いてみたいと言う向きには是非この作品をレコメンドしたい。
この作品はオーシャンの持つ要素が最もスムーズにとけこんで、かつバラエティにも
富んでいる素晴らしい作品である。

この作品が出たのは1999年であるが、その頃のイギリスというのはどうだったかと
言うと、散々持て囃されたブリット・ポップはほぼ完全に終焉を迎えていた。

例えば、ブリット・ポップの第二世代に位置していたブルー・トーンズは96年に
『エクスペクティング・トゥ・フライ』というデビューアルバムで華々しくUKチャートの
1位を飾っていたが、本作と同時期に発売された『サイエンス・アンド・ネイチャー』が
最後のメジャーレーベル作品となったし、比較的ポップと言うよりはロック寄りで
オーシャンともサウンドに共通点の有るキャストもこの頃に出た『マジック・アワー』が
辛うじてトップ10ヒットにはなったが、次作ではアルバムが50位にも入らずツアーも
出来ないまま解散してしまった。

勿論スーパーグラスのようにその後もしぶとく作品を発表したバンドも居たけど
そういうのは奇跡に近くて、ドッジーはとっくに解散していたし、あれだけ持て囃された
パルプやスウェードも人気は下降線を辿って程なく解散してしまう、そんな時期だった。

ブラーやオアシスのようにブームを牽引しながらも元々のキャパシティや下積みが
長かったり、ソングライターの質が抜けているバンドは別格としても、この時期
UKポップ・ロックをブームを担ったバンドの多くは衰退期を迎えていて、作品も
内省的であったり、新しいことを試みつつも何処かブレていってしまいファンの支持も
得れなくなってしまうと言う悪循環に突入していたと思う。それがブームの終焉だといえば
そういう事だったんだろう。

オーシャン・カラー・シーンは前作『マーチング・オールレディ』がUK1位を記録し
『モーズリー・ショールズ』の勢いをそのままに、より確信的に90年代的モダーンズ
サウンドを進化させていっていた。むしろ1位になった『マーチング・オールレディ』は
華やかだけど作品を作る時間には追われていた感じがしたのだが
(『モーズリー・ショールズ』の成功が冷めない内にリリースする必要が有っただろうから)
そこで得た自信と深化によって、彼らが単なる一過性のバンドではないことを自分たちでも
確立できただろうし、ブームに左右されない己の世界を固めていったのも今回紹介する
『ワン・フロム・ザ・モダン』からだったのではないかと思う。

前述のとおりUKポップ・ロックブームは去ったけど彼らは2作続けて自分たちの作品が
セールス的にも評価されたことでじっくり、そして必要なお金をかけて次作の制作に望めた。
そして前作『マーチング・オールレディ』からまる二年のブランクで発売されたのが
タイトルもズバリな『ワン・フロム・ザ・モダン』である。

このアルバムからの先行シングルは「プロフィット・イン・ピース」という彼ららしい
キレと爽やかさが同居する一見ではオーシャンらしい楽曲だったのだけど、タイトルからも
想像できる通り初めて明らかに社会的な内容について歌った曲でも有った。それも
モッズ的と言えばらしいナンバーでいきなりサイモンのソングライティングと
スティーヴ・クラドックの小気味良いギターカッティングが見事に同居しているし
曲調に反して重めなボトムで締めるデーモンとオスカーのリズム隊も冴えている。
これがそのままアルバムの1曲目として少なくともサウンド的には爽やかにスタートする。


「Profit In Peace」 Ocean Colour Scene
 ※日本でPVが録られた

2曲目「ソー・ロウ」は彼らの名曲の一つで、サイモンらしいアコースティックな
コードに導かれて70年代のS.S.W的な世界観でスタートしながらどんどんオーシャン
らしいアレンジが肉付けされていく。今までの作品より空間をより使った美しい
アレンジも聴きどころだし、何よりも楽曲も爽やかで、でも少し影のある感じが良い。
デーモンのベースもクールである。今作からのセカンド・シングルにもなっている。


「So Low」 Ocean Colour Scene

3曲目「アイ・アム・ザ・ニュース」はオーシャンお得意のギターリフで引っ張る
モッド・ロック・チューンだが、プロデュースやアレンジはより凝っていて
シタールやブレンダン・リンチらしいスペーシーな音響がかなり効いている。

4曲目「ノー・ワン・アット・オール」で一段落と言うのもいつも通りだけど
いつもより今回のアルバムはアコースティックな楽曲もよりアーシーさより英国的な
世界観が強い感じがする。それはそのまま今作ジャケットの世界観のようである。
土臭さよりも草原の中に佇んでいるような、そんな感じ。

そういう世界観が後にサイモンのソロの世界に直結していくわけだけど。

次の「ファミリーズ」も似たような曲想だけど、今回はとにかくアレンジがバンドで
しっかりされていて、サイモン的なフォーキー、もしくはS.S.W的世界観がバンドで
見事に消化されている。この2曲は派手ではないのだけどとても良い時間の流れを
作っている。

少し静かな展開が続いた後7曲目「ジュライ」はリフと独特のリズム引っ張っていく
彼ららしいスタイルの作品だが、今までよりこの手の作品でも勢い一発というより
緩急を付けて練られたアレンジで、飽きさせない。リフの所はまるで日本の昔の
刑事ドラマでも使われそうな少しいなたい感じだけどそれがモッズらしくて悪くない。

9曲目「エミリー・チェンバーズ」は個人的にアルバムのベストソングで、彼らの
曲でも五指に入る位大好きな曲。こんなジェントリーで幻想的でおとぎ話のような
世界観も持っているオーシャンが僕は大好きなんだろうと思う。
壊れたピアノのようなサイケな音像に導かれ、美しいメロディが聴こえて来て
それをもったりしたドラムリフが引っ張っていく、誰にでも作れる楽曲や
アレンジではない。ブレンダン・リンチのセンスも感じる。60年代的な世界観への
オマージュも含まれていると思う。

10曲目「ソウル・ドライバー」もオーシャンの代表曲の一つだろう。
オーシャン流ザ・バンド風サウンドと言ってしまえば身も蓋もないけど
ザ・バンド的なメロディにラーガ・ロックやダブっぽい音響まで入れてしまう
オーシャンはやっぱりクールだと思う。ただこれもダウン・トゥ・アースという
より草原のような世界観を感じさせるのが今作で通底している特徴である。


11曲目「ザ・ウェーブス」が後半のハイライトナンバーで、ロイヤル・アルバート・ホールに
設置されているパイプオルガンを利用して録音された重厚なバラードである。
終盤を飾るのにふさわしい華やかなアレンジとスケールが作品のエンドロールの如く
美しく耳に流れていく。前作『マーチング・オールレディ』がP.P.アーノルドのような
ゲストでモッズ感を盛り立てていたとしたら、今作は成功で得た時間や制作資金を
存分に注ぎ込めたことが想像できる、そんなリッチなアルバムでもある。

アルバムはアコースティックで少しメランコリックな「アイ・ウォント・ゲット・グレーズド」
で静かに幕を下ろす。それはまるで90年代後半を彩ったUKロック・ポップブームの
最後を静かに看取っていくかのような、センチメンタルな気持ちにさせる。

しかし、この曲は突然のように終わる。それがブーム終焉の合図のように。

因みに、デビュー作『ブルー・ディープ・オーシャン』
(まぁこのアルバムは後にフォンタナが勝手に他のプロデューサーでリミックスしてるので例外だが)
から続いていたブレンダン・リンチのプロデュース作品としては最後になった。
最も次作以降はブレンダン・リンチ直系で彼のサウンドエンジニアを務めていた
マーティン"マックス"ヘイズが引き継ぐのでこのアナログ感覚とモダンな風味が
ミクスチャーされた世界観に変わりは無いのだけど。

なお、日本盤にはボーナストラックとしてスティーヴ・クラドックが一人で録音した
ジャムのカバー「カーネーション」が収録されている。この柔らかい音像で名曲を
包み込んだカバーが秀逸で、しかもアルバムと相性が良いので悪いボーナスではない。

このオケを利用してジャムのトリビュートでリアム・ギャラガーがヴォーカルを取った。

シングルは「プロフィット・イン・ピース」の13位が最高で、前2作ほどのチャート
アクションではなかったが「ソー・ロウ」「アイ・アム・ザ・ニュース」もUKチャートの
30位台にランクインしたし、今でもこのシングル達はライブの人気楽曲である。

アルバムは4位まで上昇、ゴールドディスクも獲得し、ブームの後でも安定した
人気を裏付ける一作となった。何よりもブリット・ポップ時代のバンドに対する
風当たりがかなり強い時期にこれだけの成績を残せたこと、それこそがオーシャンが
努力してきた結果だと思うし、敢えて言えばこの作品までがオーシャンのチャートや
ブームの頃の黄金時代の最後を飾った作品で、これ以降のオーシャンはより趣味性や
コアなファン向けのスタイル、つまり時代とは無関係の方向に向かう傾向が強くなる。

僕のイメージでは『モーズリー・ショールズ』『マーチング・オールレディ』
『ワン・フロム・ザ・モダン』がオーシャン流90年代モッド・ロック三部作で
それぞれ"土"、"華"、"緑"という一言でコンセプトを勝手にまとめたくなる。

もし、『モーズリー・ショールズ』や『マーチング・オールレディ』で
彼らをクールだと気に入ってくれたのなら、是非この作品を次に手に入れて聴いてほしい
そう思わせる一作である。前二作ほどの派手さは無いかもしれないけど深さは
一枚上手だし、決して地味なアルバムではない。そして最もオーシャンのアルバム中
瑞々しくてポップなアルバムなのではないかと思う。タイトルもジャケットも好き。

繰り返すけど、90年代という時代を最後に彩ったアルバム
それが『ワン・フロム・ザ・モダン』である。
posted by cafebleu at 00:07| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Ocean Colour Scene | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月17日

Moseley Shoals

"百花繚乱のブリット・ポップ・ブームの中でも衝撃的だった時代に残る作品"


『Moseley Shoals -15th Anniversary Edition-』 Ocean Colour Scene

満を持してのオーシャン・カラー・シーン特集?は大定番のこの作品から。

先に言っておくと僕は正直このアルバムがフェイバリットではない。
しかしながら、このアルバムを最初に聴いたのは今はなき渋谷のHMV
しかも旧店舗(地下にポピュラーコーナーがあった)の試聴コーナーだったのだが
余り前情報も無しにジャケを見て「これは・・・」と思いヘッドフォンを手に
取った所、1曲目「リヴァーボート・ソング」のイントロが流れてきて
そのレトロでクールなロックに衝撃を覚えたのを今でも思いだす。これが僕と
オーシャン・カラー・シーンとの邂逅だった。

愛する音楽というのは、何時でも自分をその時の瞬間に連れて行ってくれる。

その後当時金曜深夜にやっていたUKチャートの紹介番組『Beat U.K』で
どんどんヒットチャートを登って行き、一つの時代を築くアルバムとなった
訳だけど、内容としてはその後のオーシャンのスタイルを決定づける90年代型
モッド・ロックとして完成させたのは間違いないが、その深度にはまだまだ
先が有ると、熱心に聴いていた頃はそんな風に思っていた。

それでもリリースから現在でも17年という時が流れ、改めて聴いてみると
やはり今でもその時の熱気や勢い、そして僕の個人的な想いも一瞬にして
蘇る作品で、ブリット・ポップ・ブームの後半にブラーやオアシスとは
違った形で強い異彩を放ったのは時間が流れるほど感じるようになった。

そんな時代を彩った名盤も2011年にリリース15周年記念としてリマスターと
当時アルバム未収だったB面曲をコンプリートした2枚組の装丁で再発された。

ちょうどそれに合わせて『モーズリー・ショールズ』を全曲演奏するツアーを
彼らは行っており、日本にも2011年3月に来日予定だったのだが東日本大震災の
影響で延期→後に中止となったのは前回も書いた通り。勿論チケットは取って
いたので残念な限りである。
(因みに現在UKで次作『マーチング・オールレディ』の全曲演奏ツアー中)

さて、アルバム紹介に移ろう。本作のリリースは先述の通り1996年4月に発売され
4枚のシングルは全てベスト20内にチャートインし、アルバム自体も2位を長期に
渡ってキープするヒット作となった。そして彼らの出世作でもあった。

1曲目「リヴァーボート・ソング」は3拍子ながらもハードなリフを中心に進行する
60sライクなモッド・ロックで、ざらついた音像やサイケなプロデュース
ポール・ウェラーの弾くレトロなオルガンなど雰囲気たっぷりのオープニングである。


「The Riverboat Song」('96) Ocean Colour Scene

実際下敷きになってるのは個人的にフリーの「Fire And Water」ではないかと
思うのだが、そこをベースにしながらもよりモッドな雰囲気に仕上げている。

2曲目「ザ・デイ・ウィ・コート・ザ・トレイン」は既にオーシャンのライブでは
アンセムと化している名曲で、四重人格の主人公でもあったジミーの名前が聞こえたりと
こちらは詩世界的にもイギリス人の心に深く入り込んでる一曲と言えそう。
楽曲的にはジョンを思わせるような少し変わったBメロから一気にサイモンらしい
サビに開けて、途中の「Uh,La La」部分、今ではライブの合唱用パートになってしまった。

3曲目「ザ・サークル」は今作の中ではポップ寄りなナンバーで、イントロや中盤で
聴けるギター・ソロはポール・ウェラーによるもの。如何にも60年代を思わせるような
ポップ・ロックを90年代的に解釈した感じとヴェスパ、ランブレッタが沢山出てくる
プロモがファンを喜ばせた。

シングルにもなった勢いのある最初の3曲が続いた後は4曲目「ライニング・ユア・ポケッツ」で
少しクールダウンするが、この曲もワルツながら後半は徐々にサイモンがソウルフルになり
特にライブではスティーヴがピアノとギターを行き来する様が印象的だった。

5曲目「フリーティング・マインド」は後に色濃くなるサイモンのフォーク/トラッド色を
思わせる浮遊感の有るワルツだが後半はオーシャンらしい骨太な演奏で聴かせる。
個人的には今作の中でもお気に入りの曲の一つである。

6曲目「40パスト・ミッドナイト」はピアノ・リフがモロに60年代ストーンズを
思わせるナンバーで、ファズ・ベースなんかも入ってレトロな佇まいである。

7曲目「ワン・フォー・ザ・ロード」、タイトルがロニー・レイン・スリムチャンスの
アルバムからそのままであるが、楽曲としても当時の彼らにしてはややレイドバックした
アーシーな雰囲気で、これもライブでは人気の一曲である。

8曲目「イッツ・マイ・シャドウ」はサイモンの弾き語りから始まりつつ、どんどん
サウンドが肉づいていって、バラード調から徐々に引き締まったオーシャンらしい
アレンジで聴かせる名曲の一つだろう。展開もどんどんプログレッシブになる。
これもライブではスティーヴがピアノにギターにとマルチプレーヤーっぷりを魅せる楽曲である。


「It's My Shadow」(Live at T in the Park 2004) Ocean Colour Scene

そしてリズムからしてモッド・チューンな11曲目「ユーヴ・ガット・イット・バッド」が後半の
ハイライトとして華やかに鳴らされた後、本編ラストを飾る重厚で長尺な「ゲット・アウェイ」が
アルバムを締めくくる。クリームかトラフィックあたりのインプロビゼーションを含んだような
世界観で90年代モダーンズのスタイルを提示したオーシャン・カラー・シーンの本作は終わる。

いや、こうやって一曲づつ振り返ってみるとやっぱり時代を彩った作品だったなと改めて思う。
サイモン主導もスティーヴ主導も基本はシンプルなバンドサウンドできっちりと演奏され
それが方向性をブラさずに定めているのが通して聴いても良くわかる。

後に見せていくアレンジや楽曲のカラフルさはまだ余り無いし、P.Pアーノルドとかそういう
解りやすいゲストなんかの参加やリッチなオーケストレーション、外部ミュージシャンの器用も
まだ出来なかった結果がこのシンプルなサウンドに行き着いてるんだろうけど
(プロデューサー、ブレンダン・リンチが所有していた16トラックのレコーダーで録音されたとか)
この時代がブリット・ポップという解りやすくカラフルな時代だったので逆にこの統一された
トーンが塊のような個性になって作品に詰まっている感じである。

所謂パンクの横風を受けたネオモッズ、はたまた90年代のブリット・ポップとも違うし
ダウン・トゥ・アースな要素はあれどモロに70年代というわけでも無い。
(ダウン・トゥ・アースな要素なら当時のウェラーの方が強い)
だからと言って60年代のストレートなモッズよりは演奏やロック感を重視しているのが
オーシャン・カラー・シーンの特徴で、強いていうなら彼らが目指した地平っていうのは
70年代辺りのトラフィックとかフリー、そして後期スモール・フェイセズ、初期ハンブル・パイの
ような英国から見たルーツ・ミュージックやソウルへの解釈ってことになるのかと思う。

つまりそれはマリオットやロニー・レイン、そしてスティーヴ・ウィンウッドらが
モッズとしてデビューした後、サイケを通過して目指した地平でも有り、言わば
"モッズが大人になったら"的な部分でもある。だからと言ってゴリゴリのハード・スワンプとか
完全なるニューソウルの傾倒に行き過ぎないよう60年代の色味も残して表現したのが
調子が良いというか90年代的な解釈って事になるのかも知れない。それを体現してみせたのが
この時代のウェラーであり、オーシャン・カラー・シーンやマザー・アースと言った弟分
若しくはもう少しポップでザ・フー寄りだけどドッジー辺りも組み込んで良いと思う。

だから僕はこの辺りのミュージシャンにシンパシーを感じてるのかもしれない。

モッズは狭義な文化として敬遠される時がある。それは僕も同感で、団体でヴェスパ乗って
集会開いてチープなビートロックや2トーンをやってるのがモッズであると言うのなら僕は
そこからはあぶれてるだろうし、僕からも特に仲間に入れてもらいたいと当時から思ってない。
つまり、そういう人達に言わせれば僕はモッズでも何でもない。

でも、パーソナルな部分をあぶり出し、70年代のアメリカに有ったような内省的な世界や
R&Bを咀嚼して自らのルーツに入り込んだ白人のロックまでも内包して、そういうアプローチだって
モダンなんだと、そう高らかに宣言してくれたウェラーやオーシャン・カラー・シーンのお陰で
僕はバラけすぎずに色々なミュージシャンを愛せるようになった、もっと具体的に言えば
ルーツをモダンに表現できる人達、それはザ・バンドでもプロコル・ハルムでもペンタングルでも
同じように尊敬できるような視点を持てたのは彼らのお陰だと思っている。

つまり、何でもありって考え方もそれはそれだろうけど、一つの視点からブレずに色々
見ていると、例えばザ・バンドとペンタングルには似たような良さが有るのではないかと
思えるような価値観も得れるって事なんだよね。音楽は広すぎて自由だからとっ散らかり過ぎると
自分もその宇宙を彷徨ってしまうし、そういう人って聴いてる方にもかえって分かりづらい。
広い宇宙を彷徨っても付いてくるファンが居るのはトッド・ラングレンくらい才能がないと。

ポップはひねくれても良いけど分かりづらかったり焦点がぼやけてるのはもはや
ポピュラー≒大衆的じゃないので僕は狭義と言われても自分の居座る星を決めて
宇宙を見ている方が性に合ってるのだと思う。

モッズとオーシャン・カラー・シーンをテーマにすると私見論も長くなるけど
ウェラーイズムを継承しつつ良質な音楽をやっていたマザー・アースやドクター・ジョンは
アシッドジャズブームが去った以降は商業的な成功には届かなかった。

オーシャン・カラー・シーンはある意味彼らよりカルチャーやファッションとしての
モッズを利用して、アシッドジャズの連中ほどにはニューソウルや16ビートに拘らなかった
訳だけど、その大きな原因としてはサイモンのフォーク/トラッドをルーツにしたスタイルも
有っただろうと思う。つまりそういう曲を書くタイプではないので、逆にクールなだけでなく
人の心に響くようなメランコリックさも内包していた、これにスティーヴ・クラドックの
少しハードでサイケなモッズ・マニア的な世界観が乗っかって、結果として彼らより随分
キャッチーだったと言うわけだ。

この世界観、モッズ好きなら何処かで聞いたことが無いだろうか。
そう、それはそのままスモール・フェイセズの世界観と近いのだ。
ハードでソウルフルな表現を常に意識していたスティーヴ・マリオットと
トラッドやカントリーなどルーツに入り込んだ世界観を好んでいたロニー・レイン
この二人の絶妙なバランスこそがスモール・フェイセズの醍醐味だったのは言うまでもない。

その後の二人はハンブル・パイとスリムチャンスに分かれるわけだけど、そのどちらも
悪くないし、素晴らしい作品も残したけど、やっぱりスモール・フェイセズのような
マジックは起きなかった。つまり「イチクー・パーク」みたいな牧歌的なメロディに
ソウルフルなヴォーカルが乗るような世界観は二度と戻らなかったって事である。

オーシャン・カラー・シーンがそこまでのスケールや融合だとは言わないにしても
サイモンとスティーヴ・クラドックが持っている世界観とそのバランスこそが
オーシャン・カラー・シーンらしさで、それを見事なバランスで提示したのがこの
『モーズリー・ショールズ』だったと、そう言って良いと思う。

長くなってしまったが、15周年記念盤にはボーナスとして当時のシングルB面に
収録されていた楽曲を中心にまとめた2枚目のCDが付いている。
この作品の多くは当時B面が好評で発売されたコンピ盤『B-Sides,Seasides & Freerides』
(B面を集めたコンピ盤にも関わらずUKアルバムチャートの4位まで上昇した)
で聴かれたものが多いけどオーシャン流サザン・ソウル「ソー・サッド」や
後に『マーチング・オールレディ』でP.Pアーノルドとの共演で再収録される
「トラベラーズ・チューン」のオリジナル・バージョンなど貴重なトラックも幾つかある。
何よりもこの時期のB面ナンバーは良い曲や今でも演奏されている楽曲も多いので
良いボーナストラックだと思う。

次回は時系列に沿って『マーチング・オールレディ』の予定。
posted by cafebleu at 22:32| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | Ocean Colour Scene | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月12日

Painting

"20年を越える活動の分岐点になりそうな一作"


『Painting』 Ocean Colour Scene(2013)

さて、続いてはオーシャン・カラー・シーンの新作である。

オーシャン・カラー・シーンについて簡単におさらいしておくと
シーンに現れたのは90年頃だけどメジャーデビューは92年頃と言って良いだろう。
時代はマッドチェスターブーム(日本ではおマンチェなんて言われた)が下火に
なりつつあった頃だけど、完全な終焉とも異なる微妙な時期で、そんな中彼らは
インディから「スウェイ」「イエスタデイ・トゥデイ」という当時の横風を受けつつも
もう少し6〜70年代のルーツを匂わせるような楽曲で注目を集めた。

特に「イエスタデイ・トゥデイ」はビートリーな世界観を90年代初頭の雰囲気で
表現したような快活で瑞々しいロック・ポップ・ナンバーで、フォンタナとの契約も
決まり、メジャーデビューが待望されている存在だった。

しかしながら、このデビュー・アルバムはレーベル主導によるマッドチェスター時代に
寄り添ったようなアレンジが次々施され、作成も時間がかかってしまった上
出来上がったものは明らかにオーバー・プロデュースで彼らの意図と違う
エコーに覆われた"マッドチェスター"風16ビートだらけの作品となってしまった。

更にリリース時には既に92年4月になっており、マッドチェスターはほぼ終焉の様相を
呈していたので、時代遅れな作品という評価でインディ時代の評価が嘘のように
セールス的にも失敗してしまう。

この後フォンタナとの契約を打ち切られ、バンドはレーベル契約の無い状態となって
しまった。その間、スティーヴはポール・ウェラーと出会い彼のバックバンドで
リードギタリストを担当していた。

今となってはこの邂逅こそが後にオーシャン・カラー・シーンが20年以上続く原点と
なったのだから人生はわからないものだけど。

その後、イギリスではブリット・ポップやネオネオモッズと言ったようなレトロなものを
自分たちなりに吸収して表現するような一大ブームが訪れていた。ポール・ウェラーも
そんな風に乗ってスタカン後記の不遇を徐々に拭い去り、ソロキャリアで大きな成功を
収めた頃だったのも印象深い。そのブームの中心となったのは誰あろうオアシスとブラーだ。

ウェラーにせよ、オーシャン・カラー・シーンにせよ"ブリット・ポップ"と呼べるほど
ポップな音楽性を当時に演っていた訳ではないのだけど、ブリット・ポップの源流には
ザ・ジャムのようなネオモッズサウンドが大きな影響を与えていたし、レトロなサウンドを
現代的に持ち込むっていう大きな波の中では相性も良かったのだと思う。

この不遇の間、スティーヴはウェラーのサポートで、サイモンはソングライティングを
続けながら次の機会を伺っていたということになる。

そして1stから4年以上経過していた96年に当時のウェラーと同じアイランドレーベルから
これまたウェラーと同じブレンダン・リンチによるプロデュースの下
『モーズリー・ショールズ』をリリースした。このアルバムがその後のオーシャンの
方向性を決定づけた一枚で、6〜70年代のフリーやトラフィックを思わせるような
ダウン・トゥ・アースなサウンドにモダンな意匠を施した世界観は当時のウェラーの
『ワイルド・ウッド』『スタンリー・ロード』と通底しており、ようやっとここで
オーシャン本来のサウンドメイキングが叶った作品としてリリースされた。

このアルバムからのシングル「リヴァーボート・ソング」「ザ・デイ・ウィ・コート・ザ・トレイン」
「ザ・サークル」全てがベスト10ヒットとなり、更にアルバムはUKチャートの2位に長く居座る
大ヒットとなった。
(因みにこの時期アルバムの1位に居座っていたのはオアシスの『モーニング・グローリー』)

普通デビューに失敗したバンドの殆どが2度めのチャンスはそう無いだろう。
大体一発屋としていつしか人の記憶から消えていくもので、デビューから4年も
経ったバンドの2作目が出るなんてこと自体が奇跡に等しい。特にあの頃は星の数ほど
バンドがデビューしていた頃で、需要すら最初は有ったのかも微妙である。

そういう意味で『モーズリー・ショールズ』はサウンドやコンセプトも含めて1stとは
全く異なる作品と言え、これが本人たちも実質のデビュー作という意識も有るようである。
今でもライブでは1st以前の曲は殆ど演奏されず、あくまで選曲はこの『モーズリー・ショールズ』
以降の楽曲が中心のはずだ。

それ以降の彼らの世界観は今でもこの『モーズリー・ショールズ』がベースになっており
基本的に変わらない。モダンでクールだけどルーツを強く感じるロック・サウンドと言えばよいか。
トラディショナルにモッズであるという、とても矛盾しているスタイルなのだけど
既にウェラーもそういう世界から離れてしまったのでオーシャン・カラー・シーンの
存在は稀有だと思う。

これ以降の話は各作品のレビューで触れようと思うけど、そんな紆余曲折からも既に20年以上
今のオーシャン・カラー・シーンは大ヒットとは無縁かもしれないが、常にUKではチャート
アクション、評価ともに一定のものをキープして現在まで休むこと無く作品のリリースと
ライブツアーを続けている。

残念ながら2011年3月に予定されていた日本ツアーの時は御存知の通り東日本大震災があり
(モーズリー・ショールズ全曲演奏ツアーだった)
ツアーが延期された挙句最後は中止となり、これ以降2012年のフジロックを除いて日本には
単独来日してくれてない。

オーシャン・カラー・シーンの紹介はこの辺にして、2013年夏にリリースされた最新作
『ペインティング』に触れていこう。

会心作だった2010年の『サタデー』から3年強、この前後に各自のソロ活動なんかも活発
だったので、まぁ妥当なインターバルでのリリースかなと思うのだけど、今作は中々
評価の難しい作品である。

ジャケットではメンバー三人がシタールを抱え、まるで今作品ではいよいよズブズブの
ラーガ・ロックでもやるのかなと思ったけど、聴いてみると、やや静かな
「ウィ・ドント・ルック・イン・ザ・ミラー」でスタート。ここではメロトロンや
キーボード系のサウンド中心に穏やかなアレンジを聴かせる。

そして先行シングルになった2曲目「ペインティング」はお得意のキラキラした
シャッフル・ポップ。アルバムの序盤にふさわしい元気な楽曲。
しかしこの曲には特にラーガ・ロック的な世界やシタールがビンビンに
鳴り響くような感じは全く無い。


「Painting」 by Ocean Colour Scene(2013)

3曲目「グッバイ・オールド・タウン」ではマンドリンが聴こえたりするが、やはりシタールは
聴こえてこない。まぁこの曲も快活な佳曲ではある。

4曲目「Doodle Book」はモッズっぽい縦ノリのビートロック調だが途中からダブっぽい
ブリッジが登場し、決めのブレイクが有るという中々凝った曲。

7曲目「Professor Perplex」はモロに60年代サイケ風の作品で、ヤードバーズ辺りと言うか
むしろXTCの変名バンド、デュークス・オブ・ストラトスフィアのようである。
この辺りはスティーヴ・クラドックの趣味なんだろうと思う。

12曲目「ザ・ユニオン」はオーシャンの作品には1曲は入ってそうなキレの有るロックで
音像も相変わらず凝っている。

アルバム本編はサイモンの弾き語り「ヒア・カムズ・ザ・ドウニング・ディ」で静かに終わる。

こんな感じで今作はアルバムのジャケットこそ何で皆でシタール?と疑いたくなるが
柔軟織り交ぜた質の高い"オーシャン・サウンド"を聴かせてくれている。

だが、どうも腑に落ちない感じもする。例えば、「ヒア・カムズ・ザ・ドウニング・ディ」
なんかもそうだけど、6曲目「ジョージズ・タワー」辺りはバンドでの演奏ではないし
作風もどちらかと言うとサイモンのソロっぽい気がする。

まぁ過去にも「ロビン・フッド」とか「フォクシーズ・フォーク・フェイスド」みたいな
ほぼサイモンの弾き語りの延長線に有る楽曲は有ったので思い過ごしかもしれないけど
何と言うのか、今まで上手く融合していたサイモンとスティーヴの世界観が少し剥離
し始めているような気がするのである。

今作からはクレジット上も作曲者がサイモンとスティーヴで分かれており
(これまでオーシャン・カラー・シーンはクレジット上すべての楽曲がバンド名義だった)
よりこちらも誰がどの曲のコンポーザーなのか解りやすくなったというのも有るけど
徹底的にオーシャン・カラー・シーンの基礎であるモッズっぽさ、60年代的なサイケに
拘るスティーヴと、そういう部分から少し距離を起き始めて己のアコースティックな
世界に傾倒し始めているサイモンの色の違いが明確になり始めていると思う。

過去の作品でこの感じに近いものだと、2001年の『メカニカル・ワンダー』も
スマッシュ・ヒットだった「アップ・オン・ザ・ダウンサイド」はオーシャン流
スタイル・カウンシルと言うかノーザン・ソウル的なアップテンポナンバー
だった割にアルバムが全体的に内省的なアコースティック・サウンドに終始していたので
聴いた当初は少々拍子抜けした記憶が有るのだけど、とは言え、それが当時の
オーシャンの空気そのものというか、90年代モダン・サウンドを成功させ
その後に訪れる内省を表現した作品だったと捉えることも出来たので、シングルのみが
剥離してたという印象の『メカニカル・ワンダー』と今作で感じるものは似て非なるもの
のような気がする。

とは言え、聴き返していると中々はっとさせられる部分も多くて楽曲一つ一つの
出来が悪いわけでは決して無いのである。ただ、前作『サタデー』が非常にまとまりがよく
キャッチーなサウンドだったので、それに比べるとやや地味というか焦点が定まってない
印象が残るのかもしれない。最もアルバムなんてまとまってれば良いというものでもないが。
少なくともジャケットが意味不明でかえってわかりづらくなってるだけなのかも。。

そんな訳で、記念すべきメジャーデビュー10作目の今作だけど、むしろこれまでの集大成
と言うよりか、近年活発になってきてるサイモンとスティーヴのソロ活動で広がった世界観を
各々持ち込んで、さて次はどうなっていくのかという分岐点になりそうな作品なのかもしれない。

ブラーやドッジーも再結成してくれて、各自ライブやアルバムを作ったりしてくれて嬉しいし
そういう方が話題になりやすいものだけど、続けることへの評価もリスナーには是非
忘れないでほしいと思う。続けていくことが一番大変なことだから。

オーシャンには評価の前に個人的な想いが強いので中々冷静に書くのも難しいのだけど
僕が音楽やモッズに絆されてから20年以上、その大半で彼らは定期的に作品を聴かせてくれている。
その感慨は長くファンを続けていないと中々ピンとこないかもしれないけど、彼らが常に
居てくれたことは、僕が音楽から離れてサラリーマンになって、40代をもう少しで迎える
年頃になった今でも何処かで心の支えとして頼りにしているような気がする。

僕はスモール・フェイセズは見れなかったけど、全盛期のオーシャン・カラー・シーンが
カバーしてくれた「ソング・オブ・ベイカー」は生で聴くことが出来た。それだけで十分だし
僕はボクらの時代の"スモール・フェイセズ"や"ザ・ジャム"をオーシャン・カラー・シーンに
間違いなく投影させていた。そのくらい僕にとっては大事な存在なのでどうか長く活躍
してほしいと心から応援している。

次回はデラックス・エディションで再発された『モーズリー・ショールズ』の予定
posted by cafebleu at 23:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Ocean Colour Scene | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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