2012年07月30日

From A To B (90年代UKポップ特集その1)

"シニカル路線で正統派ブリット・ポップとしてFoodからデビューしたけど。。"

『From A to B』('96) Octopus オクトパス


さて、最近日々を書いているとやや憂鬱だったり愚痴っぽかったり
するので(まぁ日々なんてそういうのが大半なんだけど)、久々に
ジャンルを絞って特集レビューでもやっていこうと思う。

まぁかなりゆったりペースだとは思うのだけど。。

僕や僕と一緒にバンドをやっている仲間も気付けば30代後半に
差し掛かり、そろそろ同窓会で昔の仲間がどうだったとか、
多感な頃に流行っていた曲が、思い起こせばもう20年近く前の
曲だったりと、少し時の流れを感じ始めている今日この頃、それは
バンドの皆にとっても同じ事で、例えば90年代、僕らは10代後半から
20代の入り口といった年頃だったので、その頃は懸命に音楽を
聴いていたのでやっぱり思い出深いので、原点回帰的にその辺りの
カバーなんかを企画でやってみようなんて話も上がっている。

既に前回紹介したドッジーの「グッド・イナフ」なんかは以前から
レパの一つだったりするし、そのドッジーやブラーなんかも再始動
しているのを目にするようになって、僕もまだ声もギターもそれなりの
テンションでやれる内に若い頃の自分に少しだけ再会しにいこうって
心持ちなのである。

うちらのバンドの話はそちらのブログでおいおい発表するとして
取り敢えず90年代のイギリスと言えば、やっぱりブリット・ポップや
グラスゴーを始めとするポップバンドのムーヴメントが起きていたので
僕も熱中して色々と聴いていた。当時はBeat UKなんかも有ったしね。

勿論ポップはイギリスだけの物でもなくて、この時代はアメリカでも
主にインディー(カレッジ)でパワーポップみたいな物が持て囃されていたし
僕はマシュー・スウィートの大ファンなので、そこら辺ももう少し取り上げたいけど
先ずは英国ポップ風景にスコープを絞って書いてみようかなと。

最初にして奥の細道的なバンド"オクトパス"唯一のアルバムを。
知名度、当時のチャートを見れば間違い無く細道なんだけど、サウンド自体は
当時の王道的なひねくれポップ路線と言ってしまえば良いと思う。
しかしながら、単なるブラーの亜流というのは惜しいほど楽曲やサウンドの
クオリティは高いのである。後で説明するが、ブームの終焉近くにデビューしたことや
ブラーがオアシスに押されて『グレート・エスケープ』のような今冷静に振り返れば
どう聴いても良質のブリティッシュ・ポップ作品あたりまでもが批判され始めていた時期に
そのブラーを擁するパーロフォン傘下のFoodレーベルからデビューしてしまったのが
運の尽きだったのかもしれない。


『From A to B』('96) Octopus

ブラーの子分的な触れ込みでデビューしたので、どちらかと言うと癖の有るコード進行や
メジャー・デビュー・シングルだった「マガジン」の狂騒的なアップテンポの楽曲
イメージが先行したのだけど(これもある意味イメージ悪化に一役買ったような気がする)
アルバム全体を覆う雰囲気はミドル中心で結構スケールのある世界観を見せる楽曲が多い。

ブラー、もしくはブラーが影響を強く受けている70年代後半のニューウェイブの
香りも確かに漂うのだけど、ブラーの「ポップ・シーン」「バンク・ホリデー」に
見られるようなキッチュでパンキッシュな疾走感の有るナンバーはむしろデビュー曲の
「マガジン」程度で、もっと腰を落ち着けた庭園的なナンバーが多いのである。
最初からこの路線をもっと売りにするべきだったと思う。


Octopus live 1996 "Your smile" and "Adrenalina"

Youtubeどころか動画検索でもまともに当時のPVが引っかからないので
かなり貴重なスタジオライブと思われる。どちらの曲も彼ららしいミドルで
スケール感がそこそこ有り、ひねくれつつも何処か甘いメロディが聴ける佳曲。
何より当時のUKバンドの割に演奏がしっかりしてる。当時流行ったクーラ・シェイカーと
彼らを比較的同時期に日本で観てるけど、明らかにオクトパスのほうが上手かった。


アルバムは上記のゆったりとした庭園的?な「ユア・スマイル」から始まる。
如何にもビートルズ系90年代ブリット・ポップと言った趣だが意表を突く良い
始まりである。続く「エヴリデイ・キス」も派手さはないが悪くない。

5曲めの「アドレナリナ」もミドルテンポのひねくれメロウな曲でサビの
ファルセットやホーンの聴かせ方もセンスがある。

インストを挟んで7曲目となる「ジェラシー」はシングルらしいシングル・カット曲で
典型的なブリット・ポップ・ソングだろう。UKポップが好きな人ならこの曲は
嫌いになる要素が余り無い。シャッフルなのも良い。

続いてデビュー曲の「マガジン」はこのアルバムでは少し異彩を放つ躁的な
アップ・ナンバー。後ろの演奏が意外にプロっぽいのがUKバンドとしては
らしくないのかもしれない。しかし、悪い曲ではないけど、このイメージが
オクトパスをブラーの亜流と判断された元凶のような気がしてならない。

9曲目のタイトル曲「フロムAトゥB」はアコースティックな小品といった趣向だが
僕の記憶ではこの曲で彼らの来日公演は始まったと記憶している。場所は勿論?
渋谷クアトロ。当時のブリット・ポップ・バンドは大概元気一杯に始まる事が
多かったけど、ここでも意表を突いて彼ららしく始まったので凄く印象に
残っている。

また1曲インストを挟んでこのアルバムのハイライト「セーブド」に。
この曲は佳曲揃いのアルバムの中でも出色の出来だろう。
シングル・カットもされ、モノクロでクールなプロモも思い出深い。
YouTubeで探したがまともな物が出てこなかった。僕もプロモをVHSか何かで
所持していたはずだが例えあってももう再生する機械すら無い。

彼ららしいゆったりとしたテンポに少しシリアスなコード展開がかなりクール。
ひねくれも忘れないのでロックにはならないのだけど、グルーヴも含めて
結構緩いドライヴ感のある名曲だと思う。

続く「ウェイト・アンド・シー」もメジャーとマイナーのコード進行にセンスが
有り、彼らのセンスの良さを感じる一曲である。

14曲目の「ナイト・ソング」はマイナーの展開から始まって、途中でXTCみたいな
ブレイクを挟んで、メジャーの展開が長めに続くドラムレスの曲だが、これも
瑞々しい楽曲である。一応本編のラストで、次の「イン・ディス・ワールド」が
隠しトラックのようだった記憶が有る。

なんだろう、このレビューのために久々にじっくりアルバムを聞き返したが
言い過ぎなのを承知で書くのなら、当時言われた「ブラーの弟子」という立ち位置よりは
成熟してからのXTC、特に『ノンサッチ』やこの時点ではリリースされていなかった
『アップル・ヴィーナス Vol.1』のような、ヨーロッパ的な格調高い庭園的サウンドを
目指していたのではないかと思えてしまう。勿論XTC程の孤高の領域には届いてないのだが。

サウンド・プロデュース的にも粗さの無い丁寧な録音と言えるので余計そう思う。

彼らは"ブラー、オアシスの次世代を担うブリット・ポップでライバルはマンサンである"
みたいな売られ方をしていたと思うが、オクトパスだろうがマンサンだろうが
全くそういった事には成らなかったのは紛れも無い事実である。クーラ・シェイカーで
すら数曲のヒットの後は尻すぼみになっていったし。

要はもうブームは終焉を迎えつつ有ったのである。そういう事もオクトパスを聴いてると
思い出される。時代はこういうポップなサウンドから、もっと時代の歪みを表現したような
サウンドに移行していくのである。そう、レディオヘッドのような。

でも、僕はそんな終焉を少し切ない気持ちで迎えた一人では有った。
僕は音楽で苦労だとか、社会性だとか、生きる苦しみを聴きたくない輩だったので。
音楽は楽しい事ばかりではない日常を3分間忘れさせてくれる、そんな物で
有って欲しいと当時の僕は強く思っていたので。


「Jealousy」Octopus

でも、やっぱりブームの陰に埋もれてしまったし、彼らがブラーやXTCを越えていく程の
クオリティは流石に持ち合わせていなかったのも事実だけど、単なるハイプで
終わらせてしまうには余りには勿体無い原石では無かったかと、そんな風に思うのである。

オクトパスについてはこの辺で。僕は彼らのステージを観て好印象を持った
数少ない人間の一人なので回想しながら彼らの想い出を書き残しておこうと。
posted by cafebleu at 01:11| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Octopus | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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