2010年02月01日

Willin'

〜楽曲の良さを引き出すセンスとアレンジ、そして〜

数年前にマシュー・スウィートとバングルズのスザンナ・ホフスが
共演したアルバム『アンダー・ザ・カバーズ』がリリースされた。


「Eternal Flame」 The Bangles [Live March 17, 2007]
やっぱりスザンナ、バングルズと言えばこの曲でしょう。再結成時の映像か。
アコースティックでしっとりと、それにしてこの人本当にいい声だし、
変わらず綺麗、もっと成功してもおかしくなかったと思う。



「You Don't Love Me」 Matthew Sweet
何処かのストア・イベントだろうか。見た目は完全に自宅警備員的な
オッサンだが、この名曲を間違いなく作った人。愛されてない事を
こんなに美しく表現できるのはマシューだけ。



「Different Drum」 Susanna Hoffs Matthew Sweet
第一弾収録のカバー。見た目は美女と野獣、しかし二人の相性は中々。
エピフォンのギターですよとかそういうヲタな主張も忘れないマシュー。



どちらも8〜90年代にそれなりの活躍をしたサブカル・ポップの
ミュージシャンではあるが、話題のリリースと言う程には至らなかった
ものの、選曲、カバーの仕方共にセンスの良さを感じさせる好盤だった事は
間違いないと言える。


『Under The Covers Vol.1』('06) Matthew Sweet & Susanna Hoffs

この時点で"Vol.1"と銘打たれていたので、いずれかは第二弾も、と言う
期待は有ったものの、今をときめくミュージシャンと言う訳でも無いので
リリースされるかどうかは微妙であろうと考えていたが、昨年後半、
無事に第二弾もリリースされた。


『Under The Covers Vol.2』('09) Matthew Sweet & Susannna Hoffs

どちらにも言えることであるが、先ず選曲が素晴らしいと思う。
とかくサブカル寄りミュージシャンの場合、本人がミュージシャンである
前に、音楽マニアでもある場合が多いので、カバーアルバムでは本人の
マニアックな趣向を見せつけようとする輩が多く、正直オリジナルを入手
するのが困難な曲のオンパレードであるような、マニアックが過ぎる選曲と
なり、あまり作品としてリスナーが「共有」できない目線のものが見受けられる。

あのポール・ウェラーですら、『スタジオ150』においては、ソウルのカバーは
中々のセンスを見せたものの、逆にダニー・ハサウェイやカーティスだって
一曲くらいは披露してくれても良いだろうと感じたし、逆にロック系のカバーでは
選曲がストレートではあるのだが、それがウェラーの本質なのだろうかと
疑ってしまうような、個人的にはやや不可解な選曲とアレンジに感じた。

少なくとも、彼のシングルB面やジュールズ・ホランド・ショーなどで披露した
カバー程の感動は得られなかったのが少々残念ではあった。

一番センスを感じたのは、トラッドなのである意味英国人には如何様にも
自由が利く「ブラック・イズ・ザ・カラー」だったのは少々皮肉な話である。

それはさておき、マシュー達のそれは、決してカルトに行き過ぎず、しかし
レトロな音楽を愛する者にとって思わず「うん」と納得してしまうような
センス溢れるカバー曲集に仕上がった。それを二作続けたのは流石、である。

余談だが、Vol.1をコリンゴが聴いた時、
「自分が青春時代に愛した音楽って間違ってなかったんだな」と
感じたようである。そんなサブカル青春を正当化させたくなる
マジックがあると言う事だろうか。

ちゃんとどちらの作品にもコンセプトが存在していて、
Vol.1が"60年代とブリティッシュ・ビートと米ソフトロックの接点"ならば、
Vol.2は"ルーツロックへの情景に魅せられた野郎どもと70年代"って感じか。
日本盤には17曲目以降がボーナストラックがたくさん入っていて、
それがかえって今作の本質をぼかしているので見えづらいが、そういう事だと
思う。あ、ボーナスの曲も出来は素晴らしいのは間違いない。ただコンセプト上
弾かれたのではないかと推測される。

アルバムはグレイトフル・デッドの軽快な「シュガー・マグノリア」でスタート。
デッドは正直僕は熱心に聴いている方では無いのだが、ルーツロックに
傾倒していたこの時期のデッドは音楽的で聴きやすいと感じている。

4曲目には70年代ロックを代表する名盤の一つ、デレク・アンド・ザ・ドミノスの
『レイラ』から、これまたクラプトンのバラードの中でも屈指の
「ベルボトム・ブルーズ」をスザンナのヴォーカルで収録。
何でもスザンナがこの曲の大ファンだったようである。
女性が歌う「ベルボトム・ブルーズ」も中々味わい深い。

思わずニヤっとしてしまうのが今作にはトッド・ラングレンのカバーが2曲も
収録されていること、しかもどちらも名作『サムシング・エニシング』からである。

やっぱりポップなアメリカ人にとって『サムシング・エニシング』あたりのトッドと
言うのは特別な存在なんだろうと、そう思ったりもする。
「ハロー・イッツ・ミー」は僕も彼の作品で最も好きな曲なので嬉しい選曲。

ビートルズ関連だと今回はジョンとジョージのソロから一曲づつ選曲されている。
ジョージの「ビウェア・オブ・ダークネス」はこれが収録されている
『オール・シングス・マスト・パス』自体が英米のルーツロック・ミュージシャンが
集結したアルバムだったので腑に落ちる。逆にジョンの「真実が欲しい」は
あんまりな選曲だろうと思ったものの、聴いてみるとマシューの声に合っていて
中々の出来栄えだなと感心してみたり。今回はビートルズ云々は余り関係ない
のかも知れない。ポール・マッカートニーは入ってなかったが、過去に彼の
トリビュート・カバー・アルバムにおいて、「エブリー・ナイト」をかなりマニアックな
解釈でカバーしていたので、ほぼソロ活動も網羅している事になるだろうか。

本人が好きかと言われると、とっても苦手なのだが、やはりフェイセズと
幾つかの作品においては評価せずにはいられないロッド・スチュワートからは
やっぱり、「マギー・メイ」。そうだよね、僕もコリンゴじゃないけど間違って
いなかったんだと、そう思えるのがこのアルバムの素敵なところ。

マシュー本人のライナーで「70年代のロニーとロットの作品で最も好きな曲」
と言うようなコメントを残しているところから、ロッドのソロ曲と言うよりは、
フェイセズの曲として意識していると言う事だろうか。ロッド・スチュワートは
フェイセズとソロの活動を並行していたし、フェイセズのライブでロッドの
ソロ曲をやると言うのは珍しいことでは無かったので、そう解釈しているのか。
もしくはロニー・レインについて一言言いたかったって事だろうか。
「マギー・メイ」のロニーのベースは最高だったし。

「マギー・メイ」、実はブラーもカバーしていて、これが彼らがやるととても
ポップに仕上がって、それはそれで良かったりもした。スザンナの歌う
それは、意外に泥臭く仕上がっていて決まっている。


「Maggie May」 blur
デーモンらしい節回しと歌声がこの曲のメロディを不思議と引き立てている

また横道に反れたが、今作での聴き所はリトル・フィートのカバーである
「ウィリン」だろう。僕はリトル・フィートは大好きだけれど、この曲の
素晴らしさに改めて感動してしまった。どちらかと言うと、リンダ・ロンシュタットの
バージョンを参考にしているのだろうが、そんなチョイスの仕方もセンスそのもの。

「ウィリン」は言うまでも無く、リトル・フィート、そしてロウエル・ジョージを
代表する名曲なのだけど、僕はリトル・フィートに対しては、どうしてもタイトで
ファンキーでオンリーワンなリズムに耳が行きがちなので、メロディ系の
楽曲よりも、例えば「スキン・イット・バック」みたいな変態リズムと歌詞に
やられてしまうのだ。特にこれが入っている『アメイジング』は70年代ロックの
アルバムでも五指に入る名盤だと個人的には思っている。

言うこと無いのだ、最高の変態ファンクロック、それだけで成り立つ。

「ウィリン」の収録されている『セイリン・シューズ』も気味悪いジャケットからして
インパクトの有るアルバムで、これも大好きだけれど、どちらかと言うと
「コールド・コールド・コールド」辺りのリッチー・ヘイワードのヘビーなドラムと
重心の低い腰にくるようなリズムが印象に残って、ある意味サウンドは爽やかな
「ウィリン」の方が印象が薄くなっていた(歌詞はドラッギーのようだが)。

マシューとスザンナが紡ぎ出す「ウィリン」はペダル・スティールと美しい
アコースティックギターのコードに導かれて、スザンナのヴォーカルが
メロディを引き出して、70年代のバラードらしいノスタルジックな仕上がりだ。

改めてローウェル本人の「ウィリン」を聴いてみたが、トーキング調で始まり
少しづつメロディがおぼろげになっていく様に、耳を奪われ、素直に感動した。
朴訥としているが、深みのある歌声、ニューオリンズを吸収した変態ファンク
とスライドだけがローウェルでは無いのだなと恥ずかしながらも今更思う。


「Willin'」 Little Feat ['77 Rockpalast]
ローウェルにとっては晩年の映像と言って良いだろう。何せ34歳で他界しているのだから。
全盛期には決して商業的に成功していなかったので余り映像が残っていないのが悔やまれる。


他にもポップ好きには大定番?のブリンズリー「ピース・ラブ・アンド・アンダースタンディング」
であるとか、ボーナスも含めて聴き所満載だと思う。一聴はVol.1の方が良いかなと
思っていたけど、何度も聴いてると、Vol.2の方が好みかも知れない。

特にスザンナ・ホフスが今作のヴォーカルが充実していて、彼女をうまく生かしていると
思ったりもする。70年代の歌らしい楽曲の方が向いているのかも知れない。
逆に、マシューの方は若干ヴォーカルに衰えが出てきたようにも思えた。
元々デブだが、それにも増して最近は大きくなって来ているような気がするので
体は大事にしてもらいたいと思う。ローウェルだってそうだったのだから。

4月に二人で来日するのが今から楽しみである。
彼らのオリジナルも聴きたい所である。スザンナがコーラスを付ける
「リーチング・アウト」とかマシューが下のパートをつける
「エターナル・フレーム」なんてのが有っても良いと思うんだけど。
posted by cafebleu at 08:12| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Little Feat | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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