2006年06月12日

Three Lions

「フットボールの母国は意外に勝負弱い」 by Lightning Seeds


ちょうど今から10年前、イギリスは二つの狂騒の最中にいた。

一つは「ブリット・ポップ」でもう一つは久々の自国開催における
フットボール(サッカー)ワールド・カップの欧州代表限定版とも
言うべき「EURO1996」があった。

そして両狂騒は一つになっていく。
この大会の自国開催に沸くイギリス(イングランド)で、
EUROのテーマ曲として、ブリットポップの裏方的存在でも
あったソングライター兼プロデューサーのイアン・ブロウディが
率いるライトニング・シーズが起用された。

そのテーマ曲の名は「スリー・ライオンズ」。
この余りにそのままなタイトル曲は二つの狂騒の中で
大ヒットを記録することになる。
因みにスリーライオンズはイングランド代表の紋章そのもの。
日本代表に例えるならカラスのマークと同様の物だ。

ライトニング・シーズの「スリー・ライオンズ」は
かなりの長きに渡って英国チャートの1位を独占した。
オアシス、ブラーは言うに及ばず、スーパーグラスやティーンエイジ・ファンクラブ、
果てはパルプやスウェードなどなど、良し悪しは置いておいても、
ブリットポップで数多のバンドが次々シングルをリリースしていた
時期でのこの記録はこの国がフットボールの
母国である事を容易に感じさせる。



実際ここまで裏方としてドッジーなどのプロデュースの傍ら、
自らもライトニング・シーズで良質なブリティッシュ・ポップを
提供していたが、それらはポップ・マニアの間では評価されながらも、
彼はそこまで自らの活動ではベスト10に入ったことは無かった。
それがおきらくなフットボールの応援歌
(決して悪い曲と言う意味ではない)で大ヒットを記録して
しまうのだから、皮肉なものである。

上記ベストを買えば今の時期にピッタリ?な
「スリー・ライオンズ」は勿論、彼のスウィートで珠玉な
ポップ・ソングが満載だ。音像は基本的にエレクトリカルでも
とても暖かく聴こえるのは彼のアレンジセンスがなせる業だろうか。
「レディ・オア・ノット」なんかは3分間で聴かせる「ポップ」の
雛形的な歌だと言っても良い。

多少方向性は違うが、イギリスにはイアン・ブロウディだけでなく、
プリファブのパディ・マクアルーンやXTCのアンディ・パートリッジ、
ニック・ロウやブルー・ナイルなど、「職人」的ポップ・アーティストが
必ず居て、彼らの作品には大抵感心させられる。
それは僕がそんな箱庭を好きだからかもしれないが。

余談だが自国開催で大変に盛り上がったEURO96だったが、
イングランドは準決勝で宿命のライバルドイツと戦い、
PKで敗れて大会から姿を消した。この大会ではスコットランド戦で
今も語り継がれる名選手ガスコインが凄いシュートを決めたりと、
とにかくイングランドは良いフットボールをしていた。
今でも近年のイングランド代表では最強だったのではとの意見もある。
しかしながら国際大会で必ず結果を残すドイツにまたしても
敗れるなど自国開催でもここ一番の勝負弱さを見せてしまった。
そしてこの後ドイツは決勝で若きネドヴェドがいた
チェコを破りEURO96を制する。

EUROはフットボール・ファンからすれば、
ある意味ではワールドカップ以上の大会とされる。
それは国の地域が「枠」で提供される故、アフリカやアジアなどからも
無条件で10カ国近くが参加し、欧州予選は必ずといって良いほど
強豪同士が同じ組になってしまったりして出れない場合があるのだ。
日韓W杯ではオランダが出れなかったし、今回ならその日韓W杯で
素晴らしい動きを見せたアイルランドやフランスを一次リーグ敗退に
追い込んだデンマーク、そしてEURO2004を守りきるサッカーで
制したギリシャがドイツW杯に出ていない。

EUROには南米のチームこそ出てこないが、
そのレベルの高さはハンパなものではない。
だから欧州の人々はEUROでもW杯と同様の盛り上がりを見せるのだ。

そしてイングランドだが、実はW杯での優勝はやはり自国開催だった
1966年の一度だけ、しかも1966年ってビートルズが現役だった頃の話だ。
EUROに至っては優勝はおろか、決勝に進んだことも無いのだ。
逆にW杯での優勝が無い強豪スペインはEUROで一度だけ優勝している。
つまりイングランドは万年優勝候補の一角とされながらも
ここまで結果を残せていないことになる。

フットボール自体も美しいし、
アンブロの作るユニフォームはいつでも格好良い、ベッカムのような
アイドルもいるし、ルーニーやランパートのような世界に通用するスターもいる。
それでありながら勝ちきれないイングランドも、
実は「実力優勝、結果惜敗」なんて言われるスペインとそう変わらないのである。

欧州の代表で結果を残しているのは間違いなくドイツとイタリアだろう。
共にW杯を3回制しているし、EUROもドイツは3回、
イタリアも1回制している。

こう見ると、やはり大一番では堅いフットボールをする国が
残りやすいのだろうか?と感じる。ドイツもイタリアも攻撃以上に
守備に定評がある国ではあったりする。

そして美しい攻撃で有名なオランダ、スペインなどは
優勝経験が無いのだから。

余談が本文より長くなったが、ライトニング・シーズの
「スリー・ライオンズ」はオランダ・ベルギー共催と
なったEURO2000でもリミックスされイングランド代表の
応援歌として使われていた。

しかしながらこの大会、イングランドは一次リーグで敗退してしまった・・・。
posted by cafebleu at 02:24| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Lightning Seeds | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月08日

Wild Mountain Side

「スコットランドとケルトの風」 by Eddi Reader


以前から素晴らしいトラッドのアルバムだと感じていたが、
紹介しそびれていたので。

エディ・リーダー、80年代後半から90年代初頭にチャートを賑わした
フェア・グラウンド・アトラクションのヴォーカリストであった。

そしてトラッシュキャン・シナトラズのヴォーカリストである
フランシス・リーダーの姉である。トラキャンでは2nd収録の
「センド・フォー・ヘニー」でもコーラスでゲスト参加している。

フェア・グラウンドの頃はどちらかというとカントリーの
英国的解釈だったようなイメージだったが、
このアルバムでのエディは自らのルーツに視点をピタリと合わせている。

このアルバム自体がある意味企画的アルバムで、全編
スコットランドでは高名なトラッド詩人である(らしい)
ロバート・バーンズの詩をベースにアレンジをした作品が
『ロバート・バーンズを想う 〜Sings The Songs Of Robert Burns〜』
という事になる。



トラッドと言えば土着したメロディも特徴だ。
簡単に言えば男所帯になってからの
フェアポート・コンベンションなどは
かなり土着したトラッド色がある。

しかし、エディ・リーダーのそれはとても爽やかだ。
まるでスコットランドの草原を駆け回るかのような
雰囲気がこのアルバムにはある。

基本的にトラッドをアレンジしたものなのだが、
唯一新作の「トラッド・ライク」な歌がある。
それが「ワイルド・マウンテン・サイド」だ。
この曲はトラキャンのソングライターでもある
ジョン・ダグラスのペンによるもの。この楽曲、
アレンジ、そしてエディの歌、全て素晴らしい。

個人的な話だが、音楽をやってる相方がこの曲を称して、
「21世紀の『夢の旅人(マル・オブ・キンタイア)』だよ、これは」
と言っていたが、全くその通りだと思う。

因みに『夢の旅人』はポール・マッカートニーが
ウイングス時代に書いたバグパイプが響くスコティッシュな歌。
英国チャートでは自らの「シー・ラブズ・ユー」の記録を超える
大ヒットにより長らくチャートの1位に居座ったが、
余りにスコットランド的なこの歌は逆にアメリカでは全く受け入れられず、
彼がアメリカで長らくレコード会社として契約していた
キャピトルから契約解除の憂き目に合うきっかけと
なったというのは以前も書いた記憶がある。

それはともかく、「ワイルド・マウンテン・サイド」の飾らない美しさは、
誰でも描けるものではない。僕はそんな風に思う。
因みにトラキャンもこの曲を近年取り上げているが、
僕はエディのヴァージョンに軍配を上げる。
posted by cafebleu at 02:20| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Eddi Reader | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月01日

Little Wing

「同志への静かで熱い追悼」 by Eric Clapton


クラプトンのクリームとは違った意味で黄金時代といえる
70年代のライブを収めたBox『クロス・ロード2』は
中々好編集盤だったと言える。

70年代のクラプトンはただギタリストであると言う前に、
一人の作曲家としても本格的にスタートを切った
時代でもあった。そしてそんな作家性のインスピレーションには
デラニー&ボニーやザ・バンド(特にリチャード・マニュエル)、
もしくは同じ英国人で同様に当時の英国的
「様式美的ハードロック」に背を向けていたスティーヴ・ウィンウッドや
ローリング・ストーンズなどもあったかもしれない。

「リトル・ウィング」は説明も不要なジミ・ヘンドリックスの
名バラードである。僕はジミヘンの熱心なファンとは言い難いのだが、
彼の書くバラードの多くは他の誰にも真似の出来ない美しくて
少し特殊なコード展開が素晴らしい。

この曲は以前、デレク・アンド・ドミノス時代にスタジオ盤でも
カバーされてるのだが、この『クロスロード2』に収められている
ヴァージョンは出色である。



レイドバック時代らしく、アレンジやテンポはかなり緩い。
ぐっとテンポを落とし、ギターの音数を減らして
その空間にはハモンドの音が広がる。
そしてクラプトンらしくオリジナルよりも
一層メランコリーにこの曲を解釈している。
そしてメランコリーな曲では先ず間違いなく
素晴らしいソロを弾く人でもあるのでこのギター・ソロも素晴らしい。

本来アウトテイクなのでややプレイにミスや
雑なところも無くは無いのだが、
そんな生々しさも含めて息遣いを感じるようなソロに心を惹かれる。

クラプトンは極めてオーソドックスなスタイルのギタリストだ。
基本の中の基本でギターを弾く人。ギミックも無い。
それでありながらポピュラー・ミュージックの歴史の中で
大きな足跡を残した事は特筆に価することだと思う。
ミック・テイラーやピーター・グリーン、もしくは
デイヴ・メイスンでは辿り着けなかったところまで行った。

だからこそ晩年はただの商業音楽になってしまったとも言えるのだが。

でもこのBoxやデレク・アンド・ドミノスのライブで
ワウ・ギターを16で引っ掻き回すクラプトンは
確かにクールな英国青年だった。
posted by cafebleu at 02:16| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Eric Clapton | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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